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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第四章 聖女、友達が出来る
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46.推薦とかは駄目なの?

 そろそろ暑くなってくる頃になると、夜間中学のクラスにも変化が現れた。

 まず、サリが卒業認定を受けた。

 既に高認に受かっているのでそもそも夜間中学に通う必要はないのだが、これまでは現代国語や古文が怪しいために席を置いていただけだったわけで。

 なので授業を受ける必要がなくなった。

 もっとも年度の終わりまでは夜間中学に在籍するそうだ。

 登校しないけどクラスに籍だけはある形になるらしい。

「これからどうするの?」

「とりあえず予備校に通うつもり。

 行きたい大学は今の実力じゃ難しいから」

 やはり大学に行くのか。

「それはそうよ。

 少なくとも大学出ていた方が社会的に有利だし」

「でもお金がかかるんじゃ」

「奨学金受けるしバイトは続けるから大丈夫」

 しっかりしているなあ。

「いいなあ!」

 リンが嘆いた。

「私なんか大学受験どころか高認すら受かってないのに!

 しかも私、もうすぐ18歳だよ?

 どうすればいいんだ」

「推薦とかは駄目なの?」

 レイナがアニメで聞きかじった知識を披露すると睨まれた。

「あれは正規の高校生だけよ。

 夜間中学出の学歴では絶対に無理」

「後はお金を積んで裏口とか」

 レイナはアニメや漫画のせいでそういう知識は豊富だった。

「そりゃ名前が書ければ入れてくれる大学はあるかもしれないけど。

 そんなの親が許してくれっこない」

「なら地道に頑張るしかないわよね。

 大丈夫大丈夫。

 大抵の人は何とかしているから」

 サリは無責任に励まして去って行った。

「レイナはどうするの?」

 聞かれた。

「まだ何とも。

 だって私、まだ中学校レベルの学力もないし」

「高認受けるの?」

「一応は受けてみるつもりだけど」

 調べたところ、高認はいくつかの科目に分かれていて必要な科目に合格すれば認定されるらしい。

 しかも科目ごとに合否が出るので、一度受かった科目はもう受験しなくても良いそうだ。

 レイナの場合、人文関係の科目は無理だが数学や理系科目はひょっとしたら合格出来るかもしれないと丹下先生に言われている。

 先生に寄ればレイナは地頭が良いので後は経験というか勉強量の問題になるらしい。

「英語なら受かるんじゃないかと」

「ああ、あまり日本語が出てこないものね」

 そういうものでもないだろうが、論理(ロジック)を元にした科目は現代国語や古典とかよりはマシだ。

「頑張るしかないなあ」

 リンがぼやきながら問題集に戻ると誰かが話しかけてきた。

「少しいいですか」

 ええと何て名前だったっけ。

 確かレスリーとか?

「いいけど」

「それではお邪魔します」

 たまたま空いているレイナの前の席に後ろ向きに坐るレスリー。

 授業中だけどいいのか?

「判らない事を先輩に教えて貰っています」

 そういう手できたか。

 丹下先生を観たけど何も言わない。

 つまりこの行動は認められているのね。

 そもそも夜間中学の授業はみんなで一斉に、というものではない。

 生徒は自由で、人の邪魔さえしなければ大抵の事は黙認される。

「で、何?」

 ついつっけんどんな言い方をしてしまう。

 レイナはこの外国人の少女が少し苦手だった。

 というかナオやサリ、リンといったお友達を除けば同級生(クラスメイト)に親しい人はいない。

 聖女候補時代に身に染みこんだ警戒心が常時発動している。

 それを抜きにしても聖力持ちであることを気づかれるわけにはいかないから、出来るだけ人とは関わらないようにしているのだが。

 レスリーが図々しく話しかけてきた。

「レイナさんって呼んで良いですか」

「それはちょっと。

 家名で呼んで」

 レイナの場合、戸籍に登録された正式名称は明智・ミルガンテ・玲奈だ。

 名字で呼ぶなら明智になる。

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