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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第三章 聖女、学校に行く
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45.つまり大聖殿って隔離施設だったと

 思えばレイナが受けてきた教育やこれまでの人生に色恋沙汰は皆無だった。

 そもそも大聖殿に所属する者は結婚しない。

 するんだったら神官を辞める必要があるが、聖力持ちを野放しにするほど大聖殿は甘くない。

 還俗することは出来ると聞いているが自由になれるわけではない。

 神職でなくなっても護衛兵とか神殿の職員くらいしか進路がない。

 当然監視付きだ。

 聖女はそれすら出来ないのだが。

「そういえば神官って結婚出来なかったのよね」

「うん。

 聖力は遺伝しないことが判っているからね。

 子供は期待されない。

 でも同棲というか事実婚は出来る。

 神官は高給取りで安定しているから人気があるし、地方の神殿にいる人達は大抵現地妻とか現地夫(パートナー)がいるって聞いている。

 ていうか、そもそも正式に結婚する人ってミルガンテでは貴族や上流階級の人たちだけだよ。

 ミルガンテの結婚って本人達が正式に夫婦になることで財産の相続とか跡取りを確定させるためにするものなんだよ。

 あと身分の継承とか利権の存続とか」

「そうなの?」

「ミルガンテの庶民の大部分は貧困だからね。

 貴族と一部の商人以外は正式に結婚なんかしないと聞いている。

 事実上の夫婦は多いそうだけど」

 でも日本(こっち)は違う。

 ミルガンテにおける庶民にあたる一般の人達もきちんと結婚するのだそうだ。

 する人は。

「少なくともこの国(日本)ではそれが主流だね。

 だんだんと変わってきているけど」

 特に若くて綺麗な女性は(パートナー)を選び放題らしい。

「興味ない」

「まあ、そうかもね。

 でもこれから好きな人が出来るかもしれないよ?」

 シンは茶化すように言うけど、どうだろうか。

 少なくともアニメやラノベに出てくるような状況にはならない気がする。

 何もかも捨ててもいいから添い遂げたいとか、相手が結婚しているのに略奪してまで、という心境にはなれそうにもない。

 そう言うとシンは頷いた。

「だろうね。

 聖女候補としてその歳まで無事だったのはそのせいかも」

「そうなの?」

「ああ。

 性質というか恋愛体質の人っているからね。

 普通の人だったら多少トラブルになる程度で済むけど、聖女がそれだったら」

「……なるほど」

 無敵の力を持つ者が感情のままに振る舞う。

 悪夢だ。

「だから、そういう性格の聖女候補は多分発覚した時点で消される。

 聖力持ちが暴走したら本人はもちろん破滅するけど周囲にも大被害が出るから」

 危険な芽は早期に摘んでおく必要があるという。

 レイナが大神殿にいる時に誰かに恋をしていたら詰んでいた。

「危なかった」

「まあ、大聖殿の方針も頷けるんだ。

 何でも出来る奴に自由にやらせたら、どう(ころ)んでもみんな不幸になるだけだし」

 それはそうだ。

 なるほど。

「つまり大聖殿って隔離施設だったと」

「うん。

 聖力持ちが暴走しないように教育して後々まで監視を兼ねて世話をして、それでも駄目だったら始末するための機関だね」

 怖っ!

 良かった無事で。

 アニメみたいな言動とっていたらとっくに消されている所だった。

 あれ?

「私、こっちの世界に来てしまって良かったの?」

「まあ、確かにレイナが暴走したり爆発したりしても止める者はいないよね。

 (レイナ)の良識に期待するしかない」

「自信ないけど」

「心がけておくべきではあるけど、レイナが自分を殺してまでとは言わないよ。

 それこそ好きにやればいい」

 無責任ではあるけど、シンの立場ではそう言うしかないんだろう。

 だって何かあってもシンにレイナが止められるとも思えないし、それはこっちの世界の誰でも同じだ。

「まだ余裕はあると思うというか、レイナが自分で決めて良いから。

 誰かを好きになったら好きにすればいいし」

「いいの?」

「止められないからね」

 さいですか。

 どうもシンは結構いい加減な性格のようだ。

 良い意味で自己中というか、周りを余り気にしない。

 しかもトラブルは避けて通るタイプか。

 まあいいか。

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