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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第三章 聖女、学校に行く
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44.それって許されるの?

「技能っていうか、僕には前世の記憶があるからね。

 これから値段が上がる株を上がる前に買って下がる株を下がる前に売る。

 まあ、まだあまり結果が出てないんだけど」

「大丈夫なの?」

「平気平気。

 レイナに当てて貰ったナンバーズや宝くじの蓄えがあるし、足りなくなったらまた当てれば良いし」

 呑気というかいい加減な話だった。

「要するに真面目にやるつもりはないと」

「そんなことはないけど仕事は最低限かな。

 せっかく第二の人生を貰ったんだから、今度は好きにやるつもり」

 それからシンの愚痴になった。

 何でも前世というか、一度目の人生はきつかったそうだ。

 若い頃は良かったが、年を食って会社での立場が上がったり結婚したり子供が出来たりしてどんどん追い込まれていったらしい。

 とにかくもう、子供を大学にやるだけの人生になってしまって、それでも頑張っていたら壊れてしまって定年まで持たずに早期退職に追い込まれたという。

「それって」

「酷い上司に当たってね。

 鬱になって休職したりして。

 それから離婚して、後はただ生きてるだけだった」

 結構早死にしたらしい。

「だから僕はもう結婚なんかしない。

 子供も作らない。

 一生、のんびりだ!」

「それって許されるの?」

「僕は家族とあまり親密じゃ無かったからね。

 高校卒業と同時に家を出て大学から一人暮らし。

 その金も親には払って貰ってない。

 後援者がいて」

 そうなのか。

 よく判らないけどシンも家族との結びつきが弱いわけか。

「寂しくなかったの?」

「僕はどうも一人が好きというか、孤独が平気みたいなんだよ。

 むしろ干渉されるとイライラする」

「それは判る」

 レイナはもっと酷い。

 そもそも家族がいないというか、覚えてないくらい縁が薄い。

 かといって大聖殿では奉られる側で、親愛とか信頼とかとは無縁の生活だった。

 聖女は結婚しないので、そういう方面での知識もまるでない。

「結婚したのよね」

「親がしないでどうするとかいうから。

 あの世代はまだ『男は結婚して一人前』とかいう常識がまかり通っていたんだよ。

 今になってみると完全に偏見だけど」

 そうか、シンは既婚者だったのか。

 もちろん前世の事なのであまり関係はないが。

「奥さんと子供がいたのよね」

「一応ね。

 それなりに上手くやっていたと思っていたけど、早期退職したこともあって見捨てられて離婚した。

 子供は元妻が連れて行った。

 それからほとんど合わなかった。

 一応、息子が結婚するときには式に呼ばれたけど」

「行ったの?」

「断った。

 もう元女房には新しい旦那がいたしね。

 息子もそっちに懐いて僕には他人行儀に接してきたから情も湧かなかった」

 結構悲惨な人生だったらしい。

「だから僕は全然未練はないよ。

 見合い結婚だったから見合いを断ればいいだけだ」

 見合いって何なのか判らなくて聞いてみたら、他人のお膳立てで会って結婚するかどうか決める事だそうだ。

 もちろん断っても良いのだが、色々あってシンは見合いした相手と結婚したらしい。

「僕の話はもういいよ。

 それよりは君の事だ。

 レイナとしてはどうしたい?

 まだ余裕はあるからすぐに決めなくてもいいとは思うけど」

 レイナは座り直した。

 その件についてはずっと考えている。

 問題はレイナには何の目的もないことだ。

「判らない。

 とにかく目立ちたく無い」

「レイナくらい綺麗ならどんな相手とでも結婚出来るよ?

 聖力とは関係なしに」

 シンが笑顔を向けてくるのでむっとしてしまった。

「私、未だにアニメやドラマに出てくる恋愛がよく判らないのよね。

 ラノベのラブコメがデタラメだっていうのは判るけど。

 そもそも誰かを好きになるって意味不明で」

「うーん。

 聖女教育の弊害かなあ。

 レイナにうっかり恋愛を教えたらどうなるか僕でも怖いよ。

 聖力を使えば無敵だからね」

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