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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第二十九章 聖女、旅立つ

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375.さらっと、ですか

 それは他力本願というの?

 シンならレイナなんか居なくても世界征服出来るかも。

 レイナはスマホを切って考えてみた。

 うん、そうしよう。

「アルバートさん」

「何だ」

「次の街に入ったらちょっとゆっくり走ってくれない?」

「何をする気だ」

 ビクビクしているのが伝わってくる。

「物理的なことはやらないから」

「本当だろうな?」

「もちろん」

 返事が軽すぎたのかアルバートはしばらく悩んだが、ついに腹をくくったのか頷いた。

「判った。

 街の中心の大通りをゆっくり突っ切ればいいか?」

「それで」

 ワゴンは両側が荒れ地な広い道を走っていたが、しばらくするとポツポツと家が現れて、その向こうに街が見えてきた。

 全員無言だ。

 車道がいい具合に混んできたのでアルバートはワゴンを徐行させた。

 のろのろ走っていると街のメインストリートらしい広い通りに出た。

 歩道にはちらほらと歩行者がいる。

「これでいいか?」

「このまま行って」

 レイナは目を閉じて集中した。

 何をするか決めていたわけではないけど、聖力を薄くのばして周囲にいる人たちを調査(チェック)すると半分くらいの人に影があった。

 ぼんやりして小さい物から身体全体に広がっている濃い物まで千差万別だ。

 丁度良い。

 片っ端から(シャドー)を払っていく。

 一つ一つは大したことはないけど何せ数が多い。

 体内の聖力圧が低下していく。

 消耗するほどではない。

 だけど暴発の危険性がなくなったと感じた時点で中止。

「もういい」

 レイナの指示でアルバートがワゴンの速度を上げる。

 しばらく落ち着かなげだったがついに聞いてきた。

「何したんだ?」

「大したことは。

 あの辺にいた人たちをさらっと」

「さらっと、ですか」

 レスリーが神妙に聞いてきた。

「後で影響とかは出ませんか」

「別に悪い事したわけじゃないよ。

 ちょっと不具合(・・・)を治しただけで」

 アルバートとレスリーは沈黙した。

「……まあいい。

 レスリー、後で一応連絡しておけ」

「了解です」

 アルバートとレスリーが上司と部下になっているのを尻目にレイナは席に寄りかかって目を閉じた。

 聖力の放出が(スムーズ)になっている気がする。

 ミルガンテの大聖殿にいた頃より聖力行使の技能が明らかに向上している。

 容量も増えているみたい。

 今の放出でも目立って減ったという気がしない。

 やっぱり自由に使えているからだろうか?

 でも聖力ってメーターとかついてないからなあ。

 神官の死亡原因第一位が聖力の使いすぎによる突然死だったし。

 気をつけよう。

 街を抜けてしばらく走ると突然、海が見えた。

 崖の上の道路を走っているようだ。

 そして驚くほど近くの海上にいきなりお城があった。

「あれ!」

「凄いですね」

「ここから見ると完全に島だな」

 それぞれ反応は違ったが似たようなものだった。

「橋があるという話だけど」

「この場所から見ると隠れてるな。

 まだちょっとかかる」

 それだけ遠いわけだ。

 でも異様に大きく見える。

「周りに比較するものがないからでしょうね。

 海ですし」

「なるほど」

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