332.じゃあ、そこは次に回すとして
「目立たない?」
「目立った方がいいんです。
どこかのVIPかセレブと誤解して貰えれば突進してこないと」
レイナ様は本物のVIPでセレブですので、とドヤ顔のレスリー。
めんどくさいなあ。
でもしょうがないか。
「ならそうする」
フリープランと言う事で、第一回はとりあえず歴史的な建物を見て回ることになった。
「ロンドン塔やビッグベン、国会議事堂にバッキンガム宮殿といったところでしょうか。
大英博物館には行ったんですよね?」
「ロゼッタストーンとか観てきた」
「じゃあ、そこは次に回すとして」
楽しそうだな。
もちろんレスリーは侍女枠でついてくるつもりだろう。
自分が観光したいだけじゃないのか。
別にいいけど。
大雑把に候補地を決めると早速レスリーがどこかに連絡した。
ちょっとやりとりした後に親指を立てて言う。
「OKです」
さようで。
イギリスでもOKとか言うのか。
「準備に少し時間がかかるそうなので明日の朝からでいいですか」
「いいよ」
というよりはそんなに早くていいのか。
ベンツだかリムジンだか知らないけどレイナの我が儘にそんな高価な車を回すって。
ラノベの悪役令嬢かよ。
まあいいか。
その日はレスリーが持ち込んできた観光パンフレットを眺めて過ごした。
ロンドン市内はもちろんとして、他の場所にも面白そうな物がたくさんあった。
そういう書き方なのかもしれないけど。
アニメでもちらっと出てきたけど、英国は妖精とか怪物とかの人外の伝説が結構多いみたい。
魔法も他の国に比べたらポピュラー。
そういう土地柄なのかも。
珍しくシンが夕食に誘ってくれたので、シンの部屋でルームサービスの食事を摂りながら話したら頷かれた。
「イギリスってそういう話が多いらしいよ。
幽霊が出る屋敷があっちこっちにあるとか」
「そうなの!」
「古いお城なんかには貴族の幽霊や甲冑の首無し騎士が住み着いているとかで観光資源になっていたりして。
死んだら土葬だから墓地がたくさんあって、そこでもよく出るって」
何と。
日本にもお墓がたくさんあったけど、それ以上らしい。
「魔法とかも?」
「割と身近というか。
アーサー王の剣は湖の妖精から貰ったという話だし、側近には魔法使いもいたよね」
なるほど。
アニメだから盛っているのかと思っていたけど事実? だったのか。
レイナが感心しているとシンがハンバーグをパクつきながら言った。
わざわざ作って貰ったらしい。
「幽霊見学ツアーにでも行く?
実際、そういう企画もあるらしいし」
「遠慮しておく」
聖力で吹き飛ばしてしまったら観光業者が困るだろうし。
ていうかレイナなら正体を見破ってしまいそうだ。
ロマンはそのままにしておくべきか。
「ま、楽しんできなよ。
こっちはまだしばらくかかりそうだから」
「大丈夫なの?」
ちょっと心配になって聞いてしまった。
だってタイロン氏の組織は歴史がある巨大なものなのに。
シンがたったひとりで立ち向かってもいいのか。
「僕の後ろにはレイナがいるでしょ。
それだけで援護は十分」
そうなのか。
まあ何かあったら全部吹き飛ばしてからシンを生き返らせればいいだけだけど。
あれ?




