307.ヴェルサイユ行きは大丈夫?
「こちらで食べる事も出来ますよ?」
レスリーが謎かけしてきた。
そうか。
お屋敷内が落ち着かないものね。
人に取り巻かれるのは嫌かな。
「こっちで食べる」
「判りました」
レスリーが内線電話でどこかに連絡する。
そのままソファーに座ったところをみると、自分も一緒に食べる気満々だ。
まあいいけど。
「そういえばレスリー、聞きたいんだけど」
「何でしょうか」
「ヴェルサイユ行きとかは大丈夫?」
「許可が取れました。
今、調整中とのことです。
もちろん私の同行は基本です」
なぜか誇らしげなレスリー。
もういいよ。
「なら、ヴェルサイユの他にも良さそうな観光地を見繕ってくれない?
調べてみたんだけどよく判らなくて」
「かしこまりました」
簡単だった。
レイナが言えば通るというのは本当みたい。
レスリーはスマホを取り出して言った。
「何かご希望はありますか?
漠然とでいいので」
「そうね」
考えてみたけど、そもそも知識不足で何も思いつかない。
「アニメの聖地とか」
苦し紛れに絞り出したのがそれだった。
「アニメの、ですか」
「無理ならいいけど」
「いえ。
候補地はいっぱいあります。
例えばロンドン塔とか」
あっさり出てきた。
そうか。
あれか。
「確か魔術協会の本部なのよね」
「それは時計塔です。
ロンドン塔は『○薇王の葬列』とか『○ニメ三銃士』の方です」
「知らないけど」
「マイナーなアニメですからね。
でもロンドン塔自体は有名な観光名所ですよ」
「ならそこも。
時計塔も」
「ロンドン塔の方は了解です」
魔術協会も観てみたかったけど、あのアニメだと内部の描写ばかりで時計塔とやらの外見はあまり出てこなかった気がする。
「入れるの?」
「ロンドン塔の一部は観光客に開放されてますから入れますよ。
宮殿は無理だと思いますが」
「魔術協会……時計塔とかの方は?」
レスリーは肩を竦めた。
「あのアニメでの時計塔って建物じゃなくて、魔術協会の一部門の総称です。
本部は大英博物館の地下にあるという設定で」
「そうなの!」
大英博物館ならシンと一緒に行った。
ロゼッタストーンとかを観たっけ。
レスリーは冷たく言った。
「ちろん大英博物館の地下にそんなものはありませんよ。
他の施設はロンドン郊外に巨大な学園都市があってそこに各学部があるということになっています」
さすがに詳しかった。
アニメヲタクの本領発揮だ。
「あるの?」
「ありません。
アニメの話ですよ」
それはそうか。
でも確かガンダムってアニメに出てくる架空の兵器だったはずなのに、今ではあっちこっちに立っていると聞いたことがある。
魔術協会もそのうちに誰かが作るかも。




