305.これからどうなると思う?
「どうぞ」
「ありがとう」
ソファーでまったりとする。
大げさだった割にはすぐに終わってしまった。
30分もかからなかったのでは。
ふと思いついて聞いてみた。
「これからどうなると思う?」
「そうですね。
結論は出ていると思うのですが、色々と手続きなんかもありますから1週間くらいはこのままかもしれません」
「やっぱり」
「でも、もう事実上レイナ様の天下ですよ。
希望、いえ命令すれば何でも通ります」
やだなあ。
でもだったら軟禁生活とはおさらば出来るのでは。
「じゃあ観光の続きと言う事で」
「よろしいかと」
よし。
でもどこに行こうか。
よく考えたら何もないのよね。
レスリーに聞くわけにもいかないし。
「そういえばヴェルサイユって行ける?」
聞いてみた。
「あれはフランスですよ。
別の国です」
「そうなの?」
「レイナ様って時々常識が抜けてますよね」
悪かったな。
日本のことすら曖昧なのに、地球の反対側の国の事なんか知るか。
「まあ、行けないこともないですが」
レスリーがブツブツ言っているのでスマホで調べてみた。
確かに別の国だ。
しかもフランスは欧州大陸にあって英国とは海峡で隔たっている。
「飛行機に乗らないと行けないのね。
フェリーとかありそうだけど」
調べて見たら英仏海峡って凄く狭かった。
ボートを漕いでも行けそう。
「泳いでも行けないことはないですが。
そうじゃなくて鉄道が通じてますよ」
「そうなの!」
それはそうかも。
日本だって本州から北海道に鉄道で行けると聞いている。
そういえば九州や四国とも繋がっていたような。
「ドーバー海峡トンネルとかユーロトンネルとか呼ばれてます。
TGVっていうフランスの新幹線みたいな高速鉄道で直接行けます」
「そうなんだ」
ミルガンテに比べて何という技術力。
聖力がないと天井知らずに発達するのか。
「私も行けるの?」
「行けますよ。
ちょっと待ってください」
レスリーもスマホで何か調べてから言った。
「もちろんフランスに入国するためには査証が必要なんですけど、レイナ様は日本国籍なので90日以内の観光でしたらなしで可能ですね。
2026年からは電子査証が必要になるみたいですが」
「そうか」
そういえばシンが何か言っていた。
日本国籍であるレイナが英国に入国するためにはやっぱり査証が必要なのよね。
「六ヶ月以内ならいらないと思いますよ。
まあ、そこら辺は組織がどうとでもしますから」
さいですか。
そういえばレスリーたちの組織って世界規模だったっけ。
「フランスにも支部とかあるの?」
「うーん。
別に単一企業じゃないので支部とか支所とかじゃないと思います。
グループ企業ならありますから」
やっぱり悪の組織じゃないの。
まあいいか。
「じゃあとりあえずヴェルサイユに行きたい」
「かしこまりました」
そんなに簡単に承諾していいのか。
レスリーが「それでは」と言って去った。
ちょっと息か詰まっていたので助かった。
レスリー謹製のコーヒーを飲みながらソファーでまったりする。
何となしにテレビをつけると世界は相変わらず忙しそうだった。
あっちこっちでミサイルが飛んだり戦車が市街地を蹂躙したりしている。
技術文明が発達するって良い事ばかりじゃないのよね。
破壊力がとんでもない。
聖力がない普通の人でも大量破壊が可能になってしまう。
そんな中ではレイナなんか無力だ。
黙っていよう。
身の程を知るレイナだった。
アニメや映画を観る気にはなれなかったのでテレビを消してタブレットとスマホで色々と調べてみた。
タブレットはネット端末としては使えたので観光地を検索する。
すると英国を含めた欧州は観光地にはこと欠かないことが判った。
別にフランスなんかに行かなくても英国だけでも回りきれないほどありそう。
問題は、前提となる知識がなければ観光しても面白みに欠けるということか。
アーサー王のお墓とかストーンヘンジとかが面白かったのはアニメや小説で出てきたからだ。
ウィンザー城も欧州を舞台にしたアニメなんかで少しは興味があった。
何も知らなければ単なる廃墟とか変な石の柱としか思えないのよね。
とすれば。
レイナが観たり読んだりしたことがある場所なら面白いかも。
 




