296.Lady Reina. As you wish.
「さて」
なぜかシンが言った。
「レイナ、この方々はタイロン氏のお仲間というか、重要な立場についておられる人たちだ。
自己紹介して」
はいはい。
レイナは立ち上がって礼をとった。
アニメの見よう見まねだが聖力で補正しているので悪役令嬢並には決まっているはずだ。
「My name is Reina Milgante Akech. Nice to meet you.」
夜間中学の英語の授業って役に立つなあ。
レイナの挨拶を受けてグロリア様を含む相手方の全員が立ち上がった。
グロリア様は礼をとり、紳士方は右手を胸に当てて深く頭を下げる。
「「「「Lady Reina. As you wish.」」」」
綺麗にハモッたりして。
練習でもしたんだろうか。
シンをちらっと見るとちょっと頷いたので、レイナも少し頭を下げてから坐る。
それを待っていたかのようにグロリア様たちも腰を下ろした。
えーと。
こういうのってどっかで読んだような。
身分の高い人が座らないと下級の人たちも坐れないとか?
そういう立場なのか。
「レイナ。
早速だけど」
シンに言われて「判った」と答える。
聖力で目の前の人達を調査。
グロリア様は真っ白だったけど、他の紳士方は多かれ少なかれ身体のあちこちに影があった。
心臓が丸ごと影に飲み込まれている人もいたりして。
ヤバそう。
「いいの?」
「やっちゃって」
ということで聖力で一撫で。
少し抵抗があったけどあっさり全員の影を祓う。
反応は劇的だった。
一番ヤバそうだった老紳士が目を見開いて胸をさすったかと思うと急に立ち上がった。
手を振り回す。
何か叫んでいるけど意味不明。
その他の人達もそれぞれ身体を触ったり叩いたりしながら興奮してしゃべりまくっている。
グロリア様は微笑ましそうに観ているだけ。
何で得意そうなの?
気配を感じて横目で見るとレスリーがにんまりしていた。
似合わないから止めて。
狂騒はシンが声を掛けるまで続いた。
そこから先はシンの独演場だった。
すっかり飼い慣らされたようなグロリア様たちと普通に会話しているだけなのだが、どう見ても雰囲気的に上司と配下だ。
もちろんシンが上司で。
最後にシンが何か言うと、皆さんが一斉に立ち上がった。
一人一人、レイナの前に来てさっきより深く腰を折る。
「Lady Reina. Good day.」
「I wish you all the best.」
「Our loyalty to you.」
早口だったり声が小さかったりしてよく判らないけど、どうも敬意を表してくれているようだ。
なのでレイナもいちいち「Thank you. Take care.」とか適当に返しておく。
夜間中学の英語って本当に役に立つなあ。
特にスピーキングは。
ヒアリングは駄目だけど(泣)。
それから皆さんは列を作って出て行ってしまった。
残ったのはシンとレイナ、そしてレスリーだけだ。
ていうかレスリー、まだいたの?
全然通訳してくれなかったけど。
「私はレイナ様の侍女ですので」
それで押し通す気らしい。
あんまり侍女らしいことはしてくれてないみたいだけど、まあいいか。
「これからどうするの?」
聞いてみた。
シンが肩を竦めるのでレスリーの方を向いたら「ご自由に」と言われた。
「何か上からの指示ってないの?」
「何も言われてません。
むしろレイナ様が何か要求すればそのまま通りますよ。
これからは」




