295.レイナ様はいいのです
レスリーが当然のように隣に座る。
通訳なんだろうな。
すぐにシンが部屋に入ってきた。
黒い制服の人に案内されてレイナの隣に着席する。
どっちかといえばシンが主賓という気もするけど、どうやら始祖の再来と思われているレイナの方が重視されているようだ。
しばらくするとグロリア様を筆頭に数人が入って来た。
全員、正装だ。
グロリア様はドレスだったし紳士方はみんなタキシードだった。
そういえばシンも?
レスリーすらドレスではないか。
失敗った。
レイナだけ普段着だ(泣)。
「レイナ様はいいのです」
「そうそう、誰も何も言えないから」
両側から慰めにもなってない言葉がかけられる。
これってあれよね。
何かの儀式にジーパンとTシャツで出てくる大富豪とか大成功した起業家とかみたいな?
グロリア様たちが何か話しながら席に着く。
「遅れてすみません」とか?
まあいいけど。
レイナやシン以外の全員が短いお祈りをして食事会が始まった。
フルコースだった。
レイナの前にはテーブルシートの上に大量の食器が並び、器が次々に運ばれてくる。
困るなあ。
正式な作法なんか習ってない。
一応、食事の礼儀はミルガンテで叩き込まれたけど、あれって地球から見たら異世界のものだもんね。
アニメとかでかろうじて「ナイフやフォーク、スプーンなどは外側から使う」というようなあやふやな知識があったので、判っている振りをして食べる。
スープから始まって副菜だとかサラダだとかお肉だとか魚だとかの皿が次々に出てくるので食べ続けるしかない。
テーブルの上ではグロリア様たちとシンとで会話が始まっていたけど、レイナにはとても参加する余裕はなかった。
というよりは言葉が判らないので何か言われても加わりようがない。
夜間中学の、いや高認レベルの会話能力では無理だ。
レスリーも察したのか通訳してくれないので、レイナは食事に集中出来た。
シンは食べながら堂々と会話していた。
やっぱり英語話せるんだ。
ならば任せた!
食事はとても美味しかった。
英国でもやっぱり高級料理は違う。
もっともあのシャーロック・ホームズとかの店で出たアレは値段から言うと高級そうだったけど。
横目で見るとレスリーはいかにもお嬢様風に上品に食べている。
ここら辺に育ちが出るのよね。
レイナといえば、自分ではよく判らない。
ナオやサリに言わせると貴族令嬢そのものらしいが。
まあ、いいか。
多分ここにいる人達はレイナがハンバーガーを手掴みで食べても何も言いそうにないし。
食事が終わってお皿や食器が片付けられ、デザートのアイスクリームが出た。
コーヒーが欲しいなとか思っていたらシンが言った。
「食事はこれで終わりだって。
この後、ちょっと顔合わせというか会談したいそうなんだけど、いい?」
まるでレイナに決定権があるような言い方ね。
そうなのかもしれない。
私が嫌と言ったらそのまま通りそう。
「判った」
ということで一同は喫茶室というか、むしろクラブとかサロンに近いような部屋に移動した。
重厚な革のソファーが並び、テーブルは黒檀だ。
古い洋画で観たことがあるような。
紳士方が葉巻を燻らせたりしながら話すんだよね。
もちろんお酒付きで。
ふと観ると部屋の一角がバーになっていた。
バーテンダーさんがあそこで注文を受けるんだろうな。
今は誰もいないけど。




