292.あ、それは大丈夫です
ありゃま。
そんなつもりはなかったんだけどなあ。
「ここは大丈夫なの?」
『レイナ様とシン様の居場所は秘密です。
箝口令が敷かれていますよ』
さいですか。
何なく判った。
今はおそらくあのグロリア様がレイナたちを囲い込んでいる状況なんだろうな。
そういう意味ではこの本拠地は最適かも。
レイナとしても別に文句はない。
だけど落ち着くまではもう観光なんか出来そうに無いなあ。
「どれくらいじっとしていればいいの?」
聞いてみた。
『判りません。
まあ、1,2週間くらいじゃないですかね。
臨時で総会とか開いて、そこでレイナ様の当主就任を発表することになるかと』
ちょっと待て!
何だよその当主とかは。
『始祖の方が良かったでしょうか』
「いや、私はそんなもんになりたくないんだけど」
『ですが、今のままでは組織内部でレイナ様の争奪戦が始まってしまいます。
それを止めるためには組織の頂点に立って頂くしか』
「私にそんなもんが務まるわけがないでしょ。
言葉もろくに判らないのに」
『あ、それは大丈夫です』
レスリーが明るく言った。
『支配や統治じゃ無くて君臨になると思います。
教祖みたいなもので』
「宗教じゃないの!」
とんでもない話だった。
まだ何か言いたげなレスリーを無視して電話を切る。
そのままシンに電話した。
幸い、すぐに出てくれた。
「シン!
あのね」
『まあまあ、落ち着いて。
何かあった?』
のほほんとしたシンの口調に救われる。
レイナはレスリーの戯れ言を訴えたがシンはのんびり言うだけだった。
『まあ、そうなるだろうね。
いいじゃない。
狙われたり追いかけ回されたりするよりは』
「そんなことになるの?」
『なるよ。
レイナ、君はとんでもない存在なんだよ』
シンが語るところに寄れば、レイナは万能治療器であり無敵の聖女であり至高の存在であるのだそうだ。
レイナがいるといないとでは何もかも違ってくる。
味方にすれば頼もしいどころじゃないけど、敵に回したら一瞬で殲滅される。
「そこまで」
『例の預言書だか何だかの他に当時の始祖の側近だった人たちの手記が残っているらしくてね。
始祖ってミルガンテの聖人もかくやという活躍だったそうだよ。
レイナはその再来ということで』
そうなのか。
始祖ってレイナ並の破壊力を持っていたと。
「やっぱりミルガンテの人だったのかな」
『判らないけどね。
組織では神力と言っているけど、僕の感触だと聖力とみて間違いなさそうなんだよ。
しかもレイナ並』
それは凄い。
レイナはミルガンテの大聖殿でも歴代聖女の中でも有数の聖力持ちだと言われていたし、自分で言うのも何だが周囲の人達とは桁違いだったと認識している。
しかもレイナの聖力は地球に来てから更に出力を増しているような。
いやメーターがあるわけじゃないからはっきりとは判らないけど、使い勝手が上がって使用する時にスムーズになった気がする。
グロリア様の影を祓った時もすんなり行きすぎたような。
ミルガンテではもっと手間取っていたと思う。




