表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第二十四章 聖女、歓迎される

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

301/355

288.私もよく知らないんですが

「……要するにレスリーの組織が持っている預言書って」

「はい。

 といっても別に指示があるわけじゃなくて、むしろ中身は予言に近いらしいですが。

 『何々が起こって何になる』たみいな」

「ああ、それを元にして行動を決める訳ね」

 それは預言とは言えないだろう。

 むしろ予言の方か。

「例えば?」

「○○王朝は○○○年頃に滅ぶとかですね。

 結構大雑把なんですが、それだけ判っていれば組織としても身の振り方を決められるわけです。

 泥船に乗って一緒に沈むことはないですから」

 なるほど。

 言わば消極的な対処指示ということか。

 この場合、勝ち組に載るというわけではない。

 負け組から身を引くという方法で生き残りを測るわけね。

「だから貴族にはならなかったと」

「はい。

 貴族って王様の直接の配下ですから。

 その王様がコケたら一緒に滅ぼされます。

 滅ぼされないようにするためには裏切るしかないんですが、一度でもそうしたら誰からも信用されなくなります」

 怖っ。

 支配者というか権力者ってそういうものか。

「つまり貴族になったら裏切り続けないと生き残れないと」

「大きなスケールでみたらそうなります。

 その点、例えば傭兵とか民間の商人とかでしたら何か起こる前に避けるとか舞台から退場すればいいので。

 始祖がそういう方針を決めて、それからずっとそうやってきたと聞いています」

 レスリーの話は判りやすかった。

 そんな生き残り方は絶妙なバランス感覚が必要で難しいだろうけど、大まかにでも未来が判っていればむしろ容易いかも。

「ああ、それが嫌な人は組織を出て自力で頑張るわけね」

「と聞いています。

 何せ何百年、いやもっと続けてきたわけですから、野心が溢れたり理想に燃えたりする人も当然たくさん出てきたわけです。

 でもそういう人は勝手にやれと放り出されます。

 一族から縁を切られて」

「そうなの?」

「だってその人が何かやらかしたら一族も巻き込まれるでしょう。

 関係ないところで自分だけでやれということです」

 徹底しているな。

 そうやって大方針から外れて積極的に打って出そうな人を家系から排除してきたわけね。

「そういう人たちってどうなったの?」

「中には結構出世したり権力側になった人もいたそうですよ。

 でも組織はそういう人とは絶縁していますから無関係ということで」

「なるほど」

「逆に、その人達の子孫が伝手を辿って組織に合流することもあったらしいです。

 だから今の組織には色々な系統があって」

 レスリーもよく知らないらしい。

 そもそも組織とか言っているけど、実際には企業グループのようなものなのだそうだ。

 遠い親戚同士がゆるやかに結びついていて何事も合議制で決めるとか。

「財閥ってこと?」

「そこまではいかないでしょう。

 総帥みたいな人はいませんし。

 まあ、代表的な立場の人はいるらしいけど世襲でもないし任期も無いと聞いています」

「任期がないんだったら居座りそうなものだけど」

 独裁者って大抵そうなのでは。

「逆に、押しつけられた人は出来るだけ早く辞めようとするそうです。

 雑多な集団のまとめ役みたいなものですからね。

 大した権力はないのに責任だけはあって。

 疲れるばかりだそうで」

 どんな立場にもそれなりの苦労があるんだと思うレイナだった。

「組織内部のことはもういい。

 これまでの経緯ってどうなの?」

 聞いてみた。

「私もよく知らないんですが」

 レスリーの話では、組織というか始祖から続く集団は預言書に従ってなるべく目立たないようにしながら生き延びてきたらしい。

 一箇所に固まっていると何かあったら全滅しかねないので、こっそりと色々な土地に拠点を構えて一部が移住したりして。

 なるべく権力者には近寄らず、富の集積も出来るだけ避けていたんだけど、長く続く組織はどうしても発展してしまう。

 いつの間にか強固なネットワークを持つ国際的な集団になっていたそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ