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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第二章 聖女、日本国民になる
30/348

幕間5

 いつもの作業(ルーティン)のはずだった。

 ナンバーズの当選番号決定イベントは定期的に開かれる。

 その都度、イベント会場に観客を入れてその場で数字が決まる様子を興業として観せている。

 さすがにテレビ放映はないが、ネットで生中継もしている。

 もちろん恣意的に番号を操作することが出来ないように何重にもセキュリティを確保しているし、さらに言えばそれはナンバーズ運営会社の仕事だ。

 小田将五はイベント運営会社の社員で、この仕事の監督(ディレクター)を担当している。

 将五の下には数人の要員がいて現場を仕切っているのだが、そのほとんどはバイトと契約社員だ。

 従って何かあった場合の責任はすべて将五に降りかかってくる。

 もっともこのイベントは何も問題が起こらないことで有名で、観客が暴れるといった事故は一度も起きていない。

 過去に何度か興奮した客が倒れて病院に搬送されるというようなケースがあったので、万一のために手漉きの部下に救急班を命じてあるが、そのくらいだ。

 それ以外は舞台設定から観客の誘導、イベントの実行、そして後始末まで契約社員である各班のリーダーがマニュアルに従って問題なくこなせる。

 だが本当に何かあったら困るので、毎回将五が立ち会っているのだが。

 数字を決めるイベントが始まるまではいつもの通りだった。

 観客は大人しいし舞台も機器も問題ない。

 だが、イベントが始まった途端に何か違和感が襲ってきた。

 観客にも感じられたようで、あちこちでざわざわと小声で話す声が聞こえる。

 慌てて周囲を確認したが、特に問題もない。

「おい、何かおかしくないか?」

「別に」

 隣に居る部下に聞いてみたが何も感じていないようだった。

 よく観ると騒いでいるのはほんの数人で、大抵の観客は大人しくしている。

「何かあったらすぐに報告しろ」

「了解」

 イヤホンマイクで部下たちに連絡したが、誰一人として異常は感じていないらしい。

 イベントも問題なく進行している。

 だが数字が決まる度に何か落ち着かない気持ちになるのはなぜなのだろう?

 やがてすべてのナンバーが決まるといつもの通り観客がざわざわ話しながら退場していった。

 数字を確認したが、何も問題はない。

 いつもの通りだった。

 不穏な雰囲気も完全に消えている。

 気のせいだ、と将五は自分に言い聞かせた。

 何もなかったし、問題はない。

 忘れよう。

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