266.つまり私は隔離されていると
「なら始祖については詳しくないと?」
「というよりは全然知らない。
貴方やレスリーたちが別にその人の子孫とかじゃないことは知ってるけど」
「そうだな」
アルバート氏は時計を観た。
「ここで話してもいいんだが、長くなるから後にしよう。
忙しくなりそうな予感がする」
「そうなの?」
会合は向こうの都合で延期になったはずだ。
仕切り直すにしても、海外にいる幹部が集まってからになると聞いていたのに。
「レイナ嬢。
君は自分の影響力を甘く見すぎている。
実のところ組織は大騒ぎだ。
そもそもなんで君がここにいるのか気づいてないだろ?」
「休暇でしょ?」
「それはそうなんだが、実を言えばあのままホテルにいたら今頃は君の部屋の前に謁見待ちが列を作っていただろうな。
緊急避難だよ」
そうだったのか。
シンが何も言わないので気づかなかった。
「つまり私は隔離されていると」
「そうだ。
別に君の為じゃないぞ。
加熱しすぎているうちの連中の頭を冷やす必要があってな」
さいですか。
どうでもいい。
「もういいの?」
「というよりはさっき連絡が来た。
こっそり会いたいそうだ」
「誰と?」
「秘密」
大首領とか?
悪の組織だなマジで。
「シンと一緒ならいい」
「そう言うと思った。
大丈夫だ。
今頃は彼もホテルを脱出しているはずだ」
ますます陰謀じみてきたなあ。
まあいい。
「だったらこれから?」
「そうだ」
「判った」
レイナに異論はない。
どっちにしてもここはレイナにとっては遠地で自分一人では動きようがない。
欺されているのかもしれないけど何があっても聖力は無敵だ。
というわけでレイナ達はベンツで次の目的地に向かった。
やはり観光はもう終わりらしい。
レイナとしても、今のところは特に見学したいとか行ってみたい土地とかは思いつかなかったからいいのだが。
レスリーと並んでベンツの後部座席に座っていると突然レスリーが言った。
「申し訳ありません」
「何?」
「レイナ様を引き回してしまって」
「別にいい。
それに結構面白かった」
あのドールハウスには感心した。
正直言えばストーンヘンジはもっと近くで見たかったんだけど、聖力で探ってみても普通の土地だったし。
「そういえば聞きたいんだけれど」
「何でも」
「今のレスリーの立場ってどうなっている?」
英国に来るまではまだお友達的な態度だったのだが、いつの間にか侍女というか完全に目下になっている。
さっきアルバートに聞かれた時もレイナの事を主とか言っていたし。
命令か指示があったのかも。
「特に何も言われていません。
私の意思です」
「そうなの」
すると完全な操り人形というわけでもないのか。
多分、大雑把な指示しか出てないんだろうな。
私と親しくなれというような。
その方法はレスリーに任されているんだろう。
結果良ければすべて良しということね。
油断は出来ないけどレスリーとも縁があるのは確かだから、まあいいか。




