表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第二十一章 聖女、奇跡を起こす

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

261/355

249.……Isn't that weird?

 全員の紹介が済むとちょっとした沈黙が漂い、タイロン氏が咳払いして言った。

「改めてお礼を申し上げます。

 遠路はるばるご苦労様でございました」

 せっかくタイロン氏が日本語で言ってくれているのにシンの答えは英語だった。

「Don't worry. Reina and I have always wanted to come to the UK.」

 何となく言いたいことは判った。

 自分の名前が入っているからアレだろうな。

 いいけど。

 でもシンの言い方だと観光に来たみたいだ。

 それから相手が質問してシンが答えるという形での会談が始まった。

 と言ってもまずは当たり障りのないご機嫌伺いみたいな話らしい。

 ちなみにタイロン氏以外の会話は全部英語だ。

 というか日本語ではない。

 レイナの場合、そもそも日本語が母国語というわけではないので理解度は英語と似たようなものなのだが、やはり使用頻度が桁違いなので日本語の方が判りやすい。

 英語はヒヤリングがちょっと。

 踏んだ場数が違う。

 こればかりは聖力があってもどうしようもない。

 自己紹介や名前くらいは判るけど、ちょっと難しい話になると理解不能。

 すぐに退屈したレイナは暇つぶしに聖力で部屋に居る人たちを観察(サーチ)してみた。

 秘書の人達は特に問題なし。

 その他にもちょっと調子が悪そうな人は何人かいたけど大したことはなさそう。

 でも対面の真ん中に坐っている女性がひっかかった。

 胴体の一部が歪んでいる?

 じゃなくて身体中に影が散らばっている。

 聖力で「観て」いるので物理的に歪んでいるわけではないけれど、日本の空港で観た女性と同質の異常だ。

「シン」

 普通に言ったつもりだったのだがレイナの声は部屋の空気を切り裂いた。

 会話が途絶える。

「何だい?」

 女性を指さす。

「この人、内臓に(シャドー)があるんだけど。

 治していい?」

「いいよ」

 簡単に答えるシン。

「判った」

 レイナは「治した」。

「……Isn't that weird?」

 その女性、シャロンと名乗った初老の婦人は戸惑ったように声を上げた。

「What's wrong?」

 タイロン氏が聞く。

「……Suddenly, I felt fatigued.……」

 不思議そうに自分の身体を触っている婦人を見てからタイロン氏がレイナに尋ねる。

「何か……なさいました?」

「うん。

 この人の身体に(シャドー)があったから払った」

 言ってから気がついた。

 日本語じゃ通じないのでは。

「ええと。

 I deleted it because there was something wrong.」

 で良かったっけ。

 中学生の教科書の例文みたいになってしまったけど、そもそもレイナはそういう文章しか習っていない。

 部屋に居るシン以外の全員が驚愕の表情でレイナを見ている。

 通じたみたい。

 状況は急展開した。

 会談はとりあえず中断。

 初老の婦人を急遽精密検査すると言う事でタイロン氏たちは撤収。

 レイナとシンには丁寧にお詫びの上、どうかホテルで待機していただけないかと打診された。

「嫌とは言えないよね」

 シンたちとレスリー以外がいなくなった会議室で椅子の背にもたれながらシンは笑っていたけど、こんな事態を想定していたの?

「いや?

 まあ、どっかの時点でレイナが何かやらかすだろうとは思っていたけどね」

「それは酷い」

「タイロン氏たちだって確認したかったはずだよ?

 穏便に済んだ方なんじゃないの」

 シンって策士ではあるけど時々いい加減というか適当になるのよね。

 サイコロ投げて出た目で決めるとか。

 それで何とかしてしまうんだから凄いけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ