245.それで、これからの話だけど
「シンは?」
聞いてみた。
「僕が何か?」
「シンの今の身体っていくつくらいなの?」
「今は33だね」
むやみに人の歳を聞くんじゃない、と言いながらも教えてくれるシン。
「ミルガンテにいた頃はいくつだったの?」
「17歳」
すると一気に倍近く年上になったことになる。
「違和感とかなかった?」
「ないなあ。
そもそも僕ってアウトドア派じゃないし、あまり体力を使うことはやってなかったしね」
大聖殿に引き抜かれる前のシンは役人になるために修行中だったそうだ。
役所の事務官を目指していたとか。
「僕はどっちかというと地球の記憶が強いんだよね。
かなり高齢化してから死んだし」
「そうなんだ」
「だから僕の感覚としてはむしろ若返ったというか?
ミルガンテは悪夢みたいな感じで」
そうなのか。
まあ、確かに地球に比べたらミルガンテって地獄みたいだし。
あれ?
「ちょっと気づいたんだけど。
聖力を使えば不老不死って出来ない?」
そうなのだ。
レイナは自分の肉体を創造した。
シンは大聖鏡を通り抜けることで若い頃の自分に憑依出来た。
これを組み合わせれば永遠に生きられるのでは。
「出来るかもしれないけど無理だね」
シンは冷たく言った。
「魂には肉体の設計図が入っているけど、それはその時点での身体の情報なんだよ。
だからレイナがやったみたいに身体を創造しても、その時点の肉体が出来上がるだけ。
歳取ってからだったら作り直した身体も高齢者だ」
「でも細胞は赤ちゃんなんでしょ」
「それはそうだけど肉体的には老人だからね。
おかしなことになるかも」
「じゃあ、大聖鏡を使って過去に戻って」
「それだと同じ時間をくり返すだけで……いや、ちょっと待てよ?」
シンがはっとしたように顔を上げた。
「一人では無理だけど、僕とレイナがやったみたいにすればあるいは?」
そのまま沈黙してしまうシン。
何か思いついたみたい。
まあいいけど。
レイナとしてはちょっとした思いつきを言っただけで、別に不老不死を望んでいるわけじゃない。
ていうかもっと歳をとったら判らないが、今のレイナはまだ若いというか子供だ。
人生はこれからだし。
シンが考え込んでしまったのでレイナも手持ち無沙汰になってスマホを弄ることにする。
メッセージアプリを見てみたけど誰からも連絡は入っていなかった。
そういえばレスリーはどうしたんだろう。
タイロン氏に合流して下僕として駆け回っていたりして。
「……ご免。
ちょっと考え事してた」
シンが謝ってきた。
「いいけど」
「それで、これからの話だけど」
それはそうだ。
これからが本筋だったりして。
「タイロン氏から簡単に聞いてるんだけど、今日の所は挨拶くらいだそうだよ。
タイロン氏と組織の幹部のうち間に合った人が来る」
「間に合ったって?」
「世界的な組織らしいからね。
幹部も英国にいるだけじゃなくて、アメリカなんかにもかなり大きな拠点があるそうだ。
そういう人達は年に一度くらいは集まるそうなんだけど」
ああ、アニメとかに出てきそう。
魔王軍の大幹部は普段はそれぞれの任地にいるんだけど、定期的に大魔王の元に集まるのよね。
そこで勇者の迎撃体制とかどっかの国の征服状況とかを報告すると。




