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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十九章 聖女、悪目立ちする
249/350

237.英国自体が発展したんじゃないのね

 当時、英国には中央政権が存在せず、あっちこっちでバラバラの勢力が細々と争っていたらしい。

 貴族や国王がいないから富が集積されなくて、そこら辺の村なんか襲っても実入りが少ないから無視されていたそうだ。

 時々挟まるレスリーの解説を聞きながら見ていると、当時の庶民の生活を再現したらしい映像が映った。

 何か見覚えがあると思ったらミルガンテだ。

 大聖殿やその城下町じゃない、郊外の村がこんな感じだった。

 畑と牧畜を営む村には確かに財宝なんかあるはずがない。

「こんな状態が五百年くらい続いて、それから何となく発展していったそうです。

 大陸の方から文化が入り込んできたとされていますけど」

「文化」

「大陸もずっと停滞していたんですよね。

 でもルネッサンスとか宗教改革とかで」

「聞いた事はある」

 何かと思ったら高認のために囓った世界史だった。

 そうか、あれがここに繋がるのか。

「英国が自力で発展したんじゃないのね」

「ですね。

 だんだん国の形が整えられていくんですが、国王や貴族は土着の者じゃなくて大陸から渡ってきた人たちです。

 だから代々英国の王朝はドイツ系だったりフランス系だったりして」

「そうなんだ」

 征服王朝だったのか。

 そういえば思い出した。

 英国を含むヨーロッパの国が封建制度だった頃は、お互いに嫁をとったり婿入りさせたりしてみんな親戚だったと習ったっけ。

 よその国の王家の血を引いているからということで、そっちの王位を主張したりした王様もいたとか。

 英国の王朝は何度も変わっていて結構酷い時代だったみたい。

「だからレスリーの先祖は」

「ですね。

 うっかり貴族なんかになったら王朝が交代するたびに巻き込まれて滅びかねないので」

 地方豪族のまま勢力を伸ばしてきたと。

「でも力を付けすぎたら無理矢理貴族にされたりしない?」

「そこら辺は上手くやったみたいです。

 わざと勢力を分散させて弱小豪族の連合体みたいに見せかけたり、遠方の大貴族の傘下に入って叙爵を免れたり」

「なるほど」

 おかげで組織は現在でも勢力を保っている。

 戦争とかもあったはずなのに大したものだ。

「それも預言書とやらのおかげなの?」

「そう言われてますけど、判りませんね。

 家訓みたいなものが伝えられていて『何事も穏便に』みたいな?

 あまり出しゃばるな、ということで」

「それにみんな従ったわけ?」

「もちろん我慢出来なくて一花咲かせようとする人は、いつの時代にもいたみたいです。

 でもそういう人は外で勝手にやれと言われて追い出されて」

 あー、そういうことか。

 目立ちたがる人は独立させて表面的には縁を切ると。

 本体は深く静かに潜航するわけか。

 やっぱり悪の組織臭い。

 そんなことを話している内にドキュメンタリーが終わった。

 レスリーが次のプログラムを選んでいる間にレイナはコーヒーを煎れ直した。

 気がついて電話してみる。

 すぐに出てくれた。

『何?』

 シンは相変わらず単刀直入というか効率的だ。

「今レスリーが来ているんだけど」

『ああ、構わないよ。

 タイロン氏と連絡がとれた。

 夕方には着くみたい。

 このホテルの会議室を借りて夕食食べながら予備会談ということになった』

「そうなの」

 だとすればこれから外出は無理か。

「何かすることある?」

『特にないな。

 ゆっくり休んでいて』

 待機命令が出てしまった。

 とすれば腰を据えてテレビを観るか。

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