216.また飛行機に乗るの?
「いや、露骨に攫おうとしてきたりして」
「潰せばいいだけでしょう」
「それはそうだけど」
シンは頭を抱えた。
「だから警察沙汰にはしたくないんだよ。
そしたら身元引受人としてタイロン氏を呼ぶことになって借りを作ってしまう」
「ああ、そういう」
相手を潰すことに関してはシンも気にしていなかった。
まだミルガンテを引きずっているみたい。
「判った」
「だからこの時間でもやってる客層が安全そうな店を紹介して貰ったんだけどね。
色々条件つけたけど僕の英語でどこまで通じたか」
シンがぼやくのを尻目にレイナは空腹を感じていた。
何でもいいから何か食べたい。
そしてタクシーが着いた先は空港だった。
「あちゃー。
そうきたか」
シンが頭痛でもするみたいに頭を抱えた。
「また飛行機に乗るの?」
「いや。
確かにそこそこ高級でこの時間でもやっていて予約なしで使えて安全な店を紹介して貰ったんだが……まあいいか」
タクシーを降りて空港に入り、案内所らしいカウンターでシンが何か聞いてから言った。
「こっち」
二人で歩いた先は何となく見覚えがある場所だった。
「ここ?」
「うん」
「でも航空券持ってないと入れないんじゃ」
「大丈夫」
シンが受付にいる人に自分のクレジットカードを渡す。
「レイナのも出して」
「うん」
スキャナでカードを読み取ったそばかすの若い受付嬢はにっこり微笑んで言った。
「Welcome. Please take your time.」
「thank you.」
ドアが開く。
「こっちにもラウンジってあったんだ」
「ある程度大きな国際空港には大抵あるから。
ないとお客さんが怒る」
「大変ね」
飛行機を飛ばすだけでも凄いお金がかかりそうなのに、航空会社はよくやっていけるな。
「大手の航空会社はいくつかのグループに分かれていてね。
グループの会社同士で提携しているんだ。
だから同じグループの航空会社が運営しているラウンジを使える。
あと、グループ自体で独立運営している所もあるから」
「なるほど」
確かに合理的ね。
ラウンジは日本の物とは雰囲気が違った。
規模は小さいしビッフェもショボいような?
「日本のが豪華過ぎるんだよ。
レイナの朝ご飯だからこのくらいでいいでしょ」
「それもそうか」
シンとレイナは席を確保すると早速食材の調達にかかった。
ビッフェの食材は日本の物とはまったく違っていた。
当たり前かもしれないが和食が一切ない。
ご飯やお味噌汁どころかカレーやうどんすらない。
その代わりにパスタとかピザとか魚の揚げ物とポテトがあった。
「フィッシュ&チップスは英国の定番だから。
夕食がこれだけってこともあるみたい」
「そうなの」
物は試しと皿にとり分ける。
その他には色々なパンやクッキー、ビスケットの類いが大量にある。
サラダもあったが何か違う。
「何か脂っぽい」
「生サラダはなさそうだな」
「おやつじゃないの?」
「さあ」




