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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十四章 聖女、社会の真実を知る
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179.ここって今まで来たことある?

 そんな馬鹿げたことを考えながらレイナはラムステーキとやらを注文した。

 今まで食べたことがなかったような。

 他の連中も好きな物をオーダーしていたが、リンだけはハンバーグ定食と言ってしまった。

「そんなものはないぞ。

 すみませんがビーフステーキで」

「かしこまりました」

 ウェイターは平然と応える。

 さすが。

 シンも無難にシャリアピンステーキを注文していた。

「ハンバーグはいいの?」

「ここのハンバーグはやたらに高そうな肉を使っているんだよ。

 趣味に合わない」

 さいですか。

 シンの安っぽい食事好きは健在だった。

 ウェイターが去ると入れ替わりのように別のウェイターがワゴンを押してきて会食の準備が始まった。

 予めナプキンは広げてあったが、そこにナイフやフォークを揃えて配置していく。

 グラスに水が注がれ、香辛料やパンを入れた籠なども置かれる。

 これが本物のレストランディナーか!

 レイナが今までステーキハウスなどでディナーだと思っていたのはなんちゃってだったらしい。

 そういえばドリンクバーとかサラダバーとかがある時点で簡易版だった。

 レイナは隣に座っているナオに聞いてみた。

「ここって今まで来たことある?」

「何回か。

 そういえば私とサリがシンさんに面接して頂いたのもここだった」

 そうなのか。

 つまりここは入社試験会場という。

「ところでここにはサラダバーやスープバーとかあるの?」

「あるけど、このお部屋で食事する場合は使わないわね。

 希望を言えば持ってきてくれる」

 やはり。

 レイナはあの「バー」が好きなのだが。

 何といっても自分の好みの物を好きなだけ取れるというのが素晴らしい。

 だけど、このお店はそういう客向けじゃないんだろう。

 しばらく雑談している内に数人のウェイターがワゴンを押して戻って来て配膳した。

 最後に初老のウェイターが一礼して消えるとシンが言った。

「それじゃあ、食べようか」

「「「はい」」」

 リンが目を白黒させている他はみんな平然としたものだった。

 ナオとサリは経験済みらしいしレスリーはもともとこういった会食に慣れていそうだ。

 というよりは日常生活環境や身分的にはこっちの方が通常なのかも。

 レイナは言わずもがなだし、シンは主催ということで。

「リン。

 好きな様に食べればいいんだ」

 サリが見かねて言ったがリンは正式なディナーの手順を知らなかったらしくてまごまごしていた。

「でもナイフもフォークもたくさんあって」

「外側から使うんだよ。

 それに、今回は略式だからある意味どうでもいい」

「そうなの?」

 思わず聞いてしまったらナオが説明してくれた。

「こういう型式のディナーって本当は一品ずつ出てくるものなの。

 まずスープが出て、次に前菜が出て。

 その都度、食べ終わったお皿はウェイターさんが下げるから食器も取り替えになる」

「ああ、そうか。

 一品ごとに一対のナイフやフォークを使うわけね」

 ミルガンテではもっと簡単だったような。

 王侯貴族すら日本(こっち)の本格には敵わないって(泣)。

「晩餐会なんかだとそうなるけど、あれはテーブルが狭くて一度に全部持ってこれないし、数が多くて配膳している間に冷めてしまうからなの。

 今は個室だし密談を兼ねているからウェイターさんに始終出入りして欲しくない。

 だから全部のお皿が一度に来たでしょう。

 食べる順番なんかどうでもいいのよ」

 説明するナオをシンがにこにこしながら観ていた。

 あの表情は知っている。

 いい買物をしたなあ、といったところか。

 少なくともナオはシンの目にかなったようだ。

 リンはナオのアドバイスを受けながらぎこちなく食べていた。

 大丈夫そう。

 レスリーの様子を覗うと流れるような動作で上品に食べている。

 やはりレスリーはもともとこういう生活が当たり前だったみたい。

 サリがこっそりレスリーの作法を真似していた。

 上流階級の(マナー)を学ぶ、いや盗むつもりなのか。

 やっぱり狡猾というか得体が知れないというか、謎が多い女だ。

 まあいいけど。

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