174.何か全部間違っている。
エントランス前で降ろして貰う。
サリとナオはそのままリムジンを返却してから帰宅するそうだ。
どこに住んでいるのか知らないけど、知る必要もない。
そういうのはプライベートだとアニメで覚えた。
「それじゃ」
「うん」
一緒にエレベーターに乗ってそれぞれの階で降りる。
シンの部屋の方が上階なのでレイナが先に降りて帰宅。
何か疲れた気がしてとりあえずバスルームに行ってシャワーを浴び、リビングでテレビを観ながらゴロゴロする。
いい生活だ。
まるで日常アニメのキャラみたいな?
そういえばアニメの主人公たちって滅多に勉強しているシーンがない。
学校ても休み時間にだべっていたりお昼ご飯を食べていたり、あるいは放課後のサークル活動とか。
学校以外でも遊んでばかりなのだが、レイナはそれを地でいっている。
いいのか。
まあいいや。
夕方までゴロゴロしてからレイナは夜間中学に出かけた。
「おそよう」
「おひさ」
何か全部間違っている。
リンはいつも通りで何も気づいてなさそうだった。
レスリーの態度が少し後ろめたそうなのはやっぱりというかんじ?
一時限目が終わって給食の時にレイナは不意に決心した。
このままでは良くない。
「リン。
話がある」
「何?」
一緒にいたレスリーが無表情になった。
カカワリアイになりたくなさそう。
「今日の放課後、ファミレスに行こう」
「いいけど」
ぶっちゃけてやる。
そして三人で学校の近くのファミレスに来ているのだが。
夜間料金なので高い(泣)。
どっちにしてもお腹は減っていないから全員ドリンクバーだ。
レイナはコーヒー、レスリーはいつもの毒々しい色の炭酸、そしてリンはなぜか紅茶だった。
ファミレスのドリンクバーで紅茶を飲むのか。
「で、話って?」
リンが振ってきた。
「実は」
ぶっちゃけた。
ナオとサリがシンの会社に入社したこと。
二人とも通信大学に行きながらサラリーマンとして働くこと。
レイナもそうする予定だけど何をするのかは決まっていない。
そして。
「夜間中学を卒業したら私は英国に行く予定。
レスリーもついてくるのよね」
「はい」
まったく迷いのない目で言い切るレスリー。
まあ、レイナが日本を離れたら監視役であるレスリーが日本に滞在する必要もないからなのだが。
「そうか」
リンは無表情で言って紅茶を啜った。
やっぱりショックだった?
いやそうじゃなさそう。
リンが黙っているのでレイナは少し焦って続けた。
「もちろん私はいずれ戻ってくる予定だけど。
でもいつになるのか判らない。
なので」
「うん、判った。
ていうより判ってた」
リンが淡々と言った。
「そうなの?」
「ちょっと前にナオとサリに呼び出されて教えられた。
だから二人がシンさんの会社に入ったことも知っていたし、これまでみたいに私と連むのは無理だということも判っている」
何だそうか。
 




