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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十三章 聖女、歴史を学ぶ
183/349

172.でもあるんでしょ

「どういうこと?」

「うん。

 いい例が呪いなんだけど、誰かを恨んだ人が相手を殺そうとして祈って、その相手が死んだとする。

 でもやった人を逮捕したり起訴したりは出来ない……というよりは出来るけど間違いなく裁判では負ける」

「どうして?

 呪いで相手が死んだのなら殺人なのでは」

「だから、法的には呪いなんてものはないことになっているんだよ。

 ない手段を用いて殺そうとしても出来っこないからね。

 同じように超能力も認められていないから、密室の中で死んでいた人を犯人が念動力で殺したというような話も認められない」

 そうなのか。

 でも聖力なら人を殺すくらい出来るけど。

 それどころか人の身体を治したり工業技術的に不可能な製品を作ったりするのに比べたら容易だ。

 シンくらいの聖力しかない者でもやり方によっては人を殺せる。

 至近距離で心臓を止めたり脳の内部を弄ったりすれば相手は死んでしまう。

「こっちには聖力ってないからね。

 少なくとも公認はされていない。

 同じようなものに奇跡があるけど」

「奇跡?」

 シンが説明してくれたところによれば、奇跡という現象は神が起こすものなのだそうだ。

 ただし、これも人間社会の外側にあるものなので法的には存在しないことになっている。

「でもあるんでしょ」

「ある、というか。

 ローマ教会の奇跡審問官が調査して『これは奇跡である』と認めたらあることになるらしいけどね。

 でもそれって政府が法的に認めた事じゃないから」

 こっちの世界でも聖力のような力が起こす現象はあるらしい。

 でも公的には認められていない。

 ミルガンテでは聖力は身近な力だったし、むしろそれなしでは文明を維持できないくらいだったから新鮮な考え方だった。

 聖力がないために技術力が発達し、今みたいな進歩した文明を築けたとしたら、聖力ってむしろない方が良かったのかも。

 まあいいや。

 レイナが脳内問答から戻ると残りの三人はこれからの体制について議論していた。

 というよりはシンが指示してナオたちが応える形だ。

 レイナの就職問題は棚上げになったらしい。

 良かった。

「僕としては、いずれはナオさんには投資案件も担当して貰いたいんだよね」

「はい。

 通信大学の専攻は経営学部に決めました。

 まだまだお役には立てそうにもありませんが」

「それはいいんだ。

 いきなり実戦投入はさせないから。

 でも株式チャートの解析までやれとは言わないけど、相場の読み方くらいは出来るようになって欲しい」

「頑張ります」

 ナオは期待されていようだ。

 もともと秘書なんかで収まる人じゃないだろうしね。

 いずれは片腕とかに育てるつもりなのかもしれない。

 シンってそういう長期的な作戦が得意そうなのよね。

「あの……私は」

 サリが遠慮がちに言った。

 シン相手だとさすがに畏まるみたい。

「サリさんはとりあえず調査技能の習熟だね。

 証拠固めというか。

 色々コネがあるでしょ?

 そういうのも活用して」

 にっこり笑うシン。

 何か怖い。

「は、はい」

「無理にとは言わないけど」

「大丈夫です。

 やれます」

 あのサリが硬直している!

 レイナ相手には軽口叩くのに、やっぱり雇い主(シン)の前では部下に徹するのか。

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