164.差別ってある?
「そうなの?」
「はい。
うちの家系は色々と混ざっていますが大体私みたいな配色の人が多いです。
昔から移民も盛んですからね。
地方はともかくロンドンとかはもう、どこの国なのか判らないくらいで」
「へー」
「知らなかった」
「私もこの間帰国してロンドンに行ったんですが、中東かと思いましたよ。
アラブ系の人ばっかりで」
「そういえばテレビでみたけど、今のロンドンって4割がイスラムだって」
「今の市長も確か中東系の人ですよ。
地方に行ったらまた違いますが」
なるほど。
あまり関心はないけど他人ごとなのは判った。
ミルガンテから誰が来たのか判らないけど、どんな人種だったとしてもそんなに抵抗はなかったんだろうな。
「差別ってある?」
リンはすっかり腰を据えていた。
「ありますね。
特に上流階級はまだアングロサクソン系が主流ですから。
まあ、王家にも混血の方が迎えられるくらいなので、だんだんと収まってきてはいますけど」
そうなのか。
全然関心がないから知らなかった。
レイナ自身に関係してきそうにないことは基本的にスルーだ。
関わっている時間がない。
「するとレスリーの……親戚ってラノベ的な人っていないんだ」
「そんなのはいません。
まあ、中には日本のコミックに出てくる王子様系の人もいますが」
前にカラオケ店でナンパしてきた人みたいなものか。
あれはタイロン氏とは別の派閥の人だった、と聞かされているけど。
ハニトラ要員として選ばれたのかも。
いずれにしてもリンの前で話すことじゃない。
強引に話題を変える。
「そういえばリン、進路は決まった?」
陽気だったリンの雰囲気が一気に暗くなった。
「とりあえず卒業させられることは決定。
どっちにしてももう3年目だしね。
高認の科目もいくつか合格しているから中学レベルの勉強はもういいでしょうと言われた」
「それはそうですよ。
私が言うのも何ですが、リンさんは自宅で浪人して高認取って大学に行くべきです」
本当にレスリーが言うことじゃないよね(笑)。
「4月からそうなりそう。
浪人と言うよりはプー」
「リンは今17歳?」
「18になった。
ここで高認とれていれば大学行って学歴洗浄出来たんだけど」
それは残念。
まあリンは大丈夫な気がする。
強いとかじゃなくて何が起きても倒れたり悩んだりはするが、そのうちに立ち上がって平然と歩き出せるタイプだ。
サリが前に「リンは強い」と言っていたのも頷ける。
心配することはないか。
「レイナは?
大学行くの?」
矛先がこっちを向いた。
「今年というか来年度は考えていない。
これから準備するのも面倒だし」
タイロン氏の組織の問題が片付いてからでいいと思っている。
ていうか別に大学行く必要を感じていない。
キャンパスライフとやらも、どっちかというと避けたい。
知り合いが増えたら聖力の暴発を心配しなければならないし。
今みたいに少数の友達と一緒にずっと遊んでいる方が気楽だ。
それを言ったら羨望の眼差しで見られた。
「そうか。
レイナってそれが出来る環境なんだ」
「素晴らしいです!
お金や将来の生活の心配なしにヲタ……自由に過ごせるなんて!」




