151.朝早くからご免
「それでどうしろと?」
聞いたらうんざりした顔で言うシン。
「とりあえず、一度英国に来てくれって。
VIP待遇で迎えてくれると言われた」
「罠ね」
どんな罠なのかは判らないが、まず間違いなくシンやレイナにとって碌な結果にはなるまい。
「まあ、ここまで来たら一度は顔を出さないと駄目だろうけどね。
もちろんレイナも一緒」
それはそうだろう。
連中の言う「神力」の持ち主はレイナということになっているのだ。
タイロン氏はシンも聖力を使えることは知っているけど、今度会った人達は知らない。
半信半疑というところか。
それを確認するためにも呼び寄せようとするのは当然だ。
「どうするの?」
「行くしかないでしょ。
本当ならこのまま縁を切りたいところなんだけど」
「無理ね」
「ああ。
連中にとってみたら潜在的な敵対者が日本に居るようなものだし」
それは判る。
こっちがミルガンテを名乗ってしまった以上、向こうも放置は出来ない。
何せ本家みたいなものだ。
分家が堂々と無視するわけにはいかない。
「判った。
いつ行くの?」
「いきなりは無理だから。
僕も仕事の都合があるし。
レイナの夜間中学卒業後になるかな」
すると4月以降か。
「ならまだしばらく余裕ね」
良かった。
まあ、レイナとしてはいつでもいいのは確かだが。
そもそもレイナはあまり心配とかしていなかった。
聖力は無敵だ。
いざとなれば相手を殲滅すればいいだけだ。
「何考えてるのか判るけど、穏便にね」
「もちろん」
ということでとりあえず解散。
レイナは自分の部屋に戻ってお風呂に入って寝た。
翌日、ふと思いついてナオに電話してみた。
「朝早くからご免」
『レイナならいつでも。
それで?』
「実は」
英国行きの件について聞いてみた。
ナオも結構深く関わっているはずだし。
『うーん。
シンさんが言ってない以上、私からは特にないかな。
それから疑問に思っているだろうから教えるけど、私とサリはシンさんの会社に入社しました』
「そうなの!」
シンの会社って何をしてるんだっけ。
「投資会社ってよく判らないんだけれど」
『株を売り買いして儲けるとか、そういうものね。
私たちのお仕事はそれとはあまり関係ないわね。
会社組織の維持かな』
「秘書とか?」
『私はそう。
サリはちょっと違うけど』
適材適所か。
まあいい。
衝撃的なニュースだが意外というほどでもない。
前にナオが「私はレイナ側だから」とか言っていたのはこのせいだろう。
シンの部下ならそうなる。
「判った」
『あ、レイナとお友達なのは変わらないから。
レイナはシンさんの会社とは直接関係ないでしょう。
だから』
「なるほど」
『ただお仕事として関わることはあるかもしれない。
裏の方面も含めて』




