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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十二章 聖女、卒業が決まる
161/350

150.無理でしょ

 面倒くさいので部屋着のままシンの部屋に行くとコーヒーが出てきた。

「夜遅くに悪いね」

「それはいいけど。

 何か疲れてない?」

「判る?」

 シンが草臥れた表情を見せた。

「皮膚がかさかさだよ?」

「今日は大変というよりは面倒くさかったからなあ。

 先方は終わったらホテルの部屋に戻って寝ればいいんだけど、僕は帰宅しなきゃならなかったし」

 シンの愚痴は珍しい。

「シャワーでも浴びてきたら。

 待ってるから」

「そうしようかな」

 というわけでレイナはリビングでまったりした。

 冷蔵庫を漁ったらプリンがあったので有り難く頂く。

 後で補充しておけばいいだろう。

 賞味期限が迫っていたし。

 やることがないのでテレビをつけてニュースなどを見ているとホカホカのシンが戻って来た。

「いや、生き返った」

「お風呂って偉大な発明よね。

 ミルガンテにはなかったけど」

「お湯を沸かすのが大変だからね。

 じゃなくて」

 シンはレイナの向かい側に坐ると真面目な表情になった。

「レイナ。

 ちょっと面倒くさいことになった」

 シンが言うには、タイロン氏の組織は暫定的ではあるがレイナがミルガンテの者であることを認めたそうだ。

 聖女がどうのという話は出なかったが、いずれにしても組織にとってレイナは始祖の血を引く主筋であることには間違いない。

「別に血縁というわけじゃないと思うけど」

「まあ、そうだけど。

 連中が言う神力持ちということで」

 だが、だからといっていきなりレイナが組織の上に立つというわけにはいかない。

 聖力があったとしても、今の組織はそもそも聖力とは関係がないところで成立しているようだし。

 むしろ未来視というか予言の方が重視されている。

「拙いことに連中、そっちの方で僕たちを疑っているみたいなんだよ」

「疑うって?

 予言出来るってこと?」

「だね」

 シンが困った表情を見せた。

 そうか。

 シンは実際に予言出来るんだった。

 だって前世、いや前々世でこの世界の未来のある時点まで生活していたのだ。

 当然、これから起こることも知っている。

 個々の人の運命までは判らなくても世界的な大事件や天災のたぐいは予言出来てしまう。

「シンなら組織の上に立てるのでは」

「出来そうだから困っている。

 僕はそんな面倒な事したくないし」

 それは贅沢というものでは。

 ナオも言っていたが、シンは一人の人間としてみると相当優れた存在だ。

 少なくともミルガンテの大聖殿で威張っていたような連中とは比べものにならない。

 タイロン氏の組織くらい簡単に掌握できそうなのに。

「だから面倒くさいのは嫌なんだってば。

 僕はこのままニート生活を送りたいんだよ」

「無理でしょ」

「だよねえ」

 そういうことか。

 シンの言う「拙いこと」って、自分の平穏で安楽な生活が脅かされそうだという意味ね。

「そんな能力はないと言い張れば」

「僕の事を調べられていたんだよね。

 元サラリーマンで今は投資会社の代表とか。

 それでどうも疑われている」

 それは身から出た錆なのでは。

 未来を知っていればお金を儲けることなんか簡単だ。

 実際、シンはやっているみたいだし。

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