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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第十一章 聖女、移動手段を確保する

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146.私、乗れてる?

 夜間中学が始まるまで自転車の練習をすることにする。

 エントランスに行ってコンシェルジェに聞いたらこのマンションの付属公園にちょっとした広場があると教えてくれた。

 休日はゲートボールなどの練習に使われているが、平日は誰もいないので自転車の練習も可能だという。

「ただ、時々お子様連れの方が遊んでいらっしゃいますので、なるべく近寄らないようにしていただければ」

「判った」

 生まれて始めての自転車練習だ。

 間違いなく転ぶし危ない。

 幼児の列に突っ込んだりしたら大変なことになる。

 テレビのニュースでそういう事故が時々報じられるから気をつけないと。

 まあ、レイナなら聖力で撥ねた相手の身体を直せるけど。

 自転車を押してマンションの裏に回ると、なかなかの広さの公園があった。

 知らなかった。

 ブランコや滑り台に砂場という定番の遊び場の横に空き地、ではなくて金網に囲まれた広場があった。

 誰もいないことを確かめてからヘルメットを被る。

 よく道で見る自転車乗りの格好を真似てまたがると、力加減を間違えてひっくり返りそうになった。

 まだ走ってもいないのに(泣)。

 こんなこともあろうかとジーンズに運動靴なので、多少転んでも大丈夫だ。

 大抵の怪我は一瞬で治せるし、何なら死んでも肉体を再生すればいい。

 それでもやっぱりコケたら痛いし、無様にひっくり返るのは嫌だ。

 恐る恐るペダルに足を乗せて押し込むと自転車が思ったより滑らかに進んだ。

 もう片方の足もペダルに載せる。

 そのまま足を踏み込むと自転車はスルスルと走り出した。

 あれ?

 私、乗れてる?

 広場の端まで来たのでいったん止めてからそろそろと向きを変える。

 自転車は安定していた。

 そのままペダルを押し込むと自転車は颯爽と走り出した。

 何で?

 反対側まで行ってからハンドルを回してみたら、自転車はその場でくるりと回った。

 出来てる!

 姿勢はすこぶる安定しているし、多少姿勢を崩しても倒れる気配もない。

 聖力か!

 それはそうかも。

 現実を歪めることが出来るんだったら「自転車が倒れない」という状況を実現させるくらい簡単だろう。

 そうか。

 自動防衛反応か。

 ミルガンテの大聖殿で教えられた護身技能のひとつで、聖女は意識しなくても自分を守れるように訓練される。

 身に迫る危機を感知したら是正するし攻撃を受けたら自動的に反撃する。

 もっとも後者は難しいところがあって、ともすれば過剰防衛になりやすいので気をつけるように言われていた。

 体育の授業中に誰かがボールを投げてきたらボールだけでなく投げた人まで粉砕してしまいかねない。

 だからレイナは意識して防衛機能を停止させていたのだが。

 「自転車が倒れる」という本物の危機に対して自動的に発動したということか。

 それにしてもすいすい走っているけど、これって本当に「レイナが自転車の乗り方を覚えた」ということでいいんだろうか。

 ちょっと悩んだがすぐに諦めた。

 レイナ自身には判断しようがないし、外から見たら「レイナは自転車に乗れるようになった」というだけだ。

 それ以外の可能性には思い当たらないだろうし、レイナ自身にも判らないんだから仕方が無い。

 広場をぐるぐる回っている内につまらなくなったレイナは思い切ってそのまま公園を出た。

 道を走り出す。

 前に自転車について調べたことがあって何となく覚えていたのだが、日本の法律では自転車は軽車両に相当するので基本は車道を走らなければならない。

 ただし狭い車道を大型のトラックがひっきりなしに行き交っているような場合、あくまでお目をこぼしだが自転車で歩道を走ってもいい。

 ていうか黙認される。

 その他にも横断歩道がない場所で車道を横切る場合はいったん停止してから、とか色々あったけど忘れた。

 まだ怖いので車が大量に行き交っている道は避けて、誰も歩いていないような裏道を走る。

 楽しい。

 アニメやコミックに出てくるような河の土手の道を走ったりしてみたくなってきた。

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