134.それも秘書の技能?
するとナオは少し考えてから言った。
「思ったんだけど、レイナが覚えるべき『常識』って知識だけじゃなくて技能も必要だと思う」
「というと?」
「ジェンダーに拘るわけじゃ無いけど、一人暮らしならやっぱり料理くらいは出来るようになっておいた方がいい。
手料理って好感度上げに最適だから」
「そうなの」
かもしれない。
レイナにはまだよく判らないが、例えばシンにレストランで奢って貰うのとシンの手料理を食べるのとでは後者の方が嬉しい気はする。
シンの料理が美味いからなんだけど。
「不味い料理を押しつけたら駄目だけどね。
好感度がただ下がりになる」
「なるほど」
「だからね」
というわけでお料理教室が開催されることになった。
会場はレイナの家。
定期的に仲間内で材料を持ち寄って料理してパーティ? を開く。
ナオはその場でみんなに連絡して全員から快諾を得た。
仕事が早い。
「それも秘書の技能?」
「そんなものね。
段取りは基本だから」
ナオが秘書になったら仕事が捗るだろうな。
しかも本人は美人で気配り上手だ。
高給で雇われそう。
ナオと別れて自宅に戻ったレイナはとりあえずシンに連絡した。
『何かあった?』
「今、ナオと会っていたんだけど」
「常識」について教えて貰った事を報告する。
『それは良かった。
ナオさんもさすがだね』
「凄く頭がいい人だと思う。
でも何かよく判らない事を言われたんだけど。
私側だとか」
シンがははっと笑った。
『レイナは気にしなくていいよ。
それ、むしろ僕との関係だから』
「そうなの」
『しかしそうか。
ナオさんがそこまで言ったということは……そろそろかなあ』
「何?」
『そのうち判るよ。
他には?』
思い出して料理教室のことを話す。
『それはいいね。
確かに一人暮らしでいつまでもレトルトというわけにはいかないし』
「やっていいのね?」
前は料理なんかまだ早いというような雰囲気だったけど。
『もちろん。
というよりレイナは思った通りに何でもやっていいんだよ。
後始末は僕がやるから』
その言い方は酷い。
レイナが料理したら後始末しなきゃならないと思われているのか。
『そうじゃなくて。
料理だけじゃないでしょ。
他にも色々好きな事をやればいい。
ただ、報告だけはしてほしいということ』
「それはもちろん」
レイナは何だかんだ言ってもまだシンに頼りっぱなしだ。
シンがいなくなったら暴走する自覚がある。
ミルガンテだったら大聖殿が乗り出してきそうなことをやってしまう可能性が強い。
ふと思いついて聞いてみた。
「シンもお料理教室に出ない?
というよりは講師やって欲しい」
『遠慮しとく』
シンが即答した。
『まあ、そのうちレイナの手料理をご馳走してよ。
あまり手が込んだものじゃなくていいいから』
「判った」
確かにシンが料理教室に来たらハーレムになってしまう。
それは嫌だ。
子供か私は、と落ち込むレイナだった。
 




