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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第九章 聖女、悪い遊びを覚える
140/349

130.例えば信長とか?

 本当にすぐに来た。

 30分もたたないうちにインターホンが鳴ったので出ると地味なスーツにメガネの女性が映っている。

 一瞬誰? と思ったがナオだった。

「こんにちわ」

「いらっしゃい」

 エントランスを抜けてエレベーターへ。

 レイナとシンのマンションはコンシェルジェがいるが、受付のインターホンで直接訪問先に連絡すれば入棟出来る。

「お邪魔します」

 レイナの部屋に入ってきたナオはこれまでに見た事が無い装いだった。

 女性用スーツのメガネで髪もきっちりまとめてある。

 誰かに似ていると思ったら丹下先生か。

 もっとも先生は五十代だと言っていたから雰囲気はまるで違うのだが。

 しかし化けるものだ。

 今のナオを見てクラブの人気ホステスだと思う人はいまい。

 リビングに通してコーヒーを出すとナオは嬉しそうに口をつけた。

「ああ、美味しい。

 いい豆使っているの?」

「スーパーに売っている物だけど。

 一応レギュラー」

 シンと同じ物を同じやり方で煎れている。

 コーヒーの粉を買ってきて漉紙にお湯を注いでいるだけだ。

「ふうん。

 シンさんの趣味?」

「どうかな。

 あんまり拘っていないと思う」

 シンはコーヒー好きだがマニアというわけではなくて、そこら辺で売っている品を飲んでいる。

 むしろ煎れ方かな。

 そんなどうでもいいことを考えていたらナオがバッグからタブレットを出した。

「さて。

 日本文化について知りたいんだったわよね」

「というか、日本人の常識についてだけど」

 シンに言われた事を話すと頷かれた。

「確かにそうね。

 そういう、ある意味どうでもいい知識がないと社会では上手くやっていけないかもしれない」

「そうなの?」

「例えば今の私の仕事ってお客様を接待して癒やすことなんだけど、会話の内容が結構重要なの。

 お客様が言ってることが判らなかったら接待にならないでしょう」

「そうか」

「相手の趣味がどうであれ、とりあえず『知っている』ことが前提だから。

 話のとっかかりで『それ何?』とか言ったらしらけてしまう」

「例えば信長とか?」

 言ってみたら笑われた。

「それは常識ね。

 誰かに言われたの?」

「シンが」

「あーなるほど」

 ナオが言うには織田信長は日本の戦国時代の武将で、もうちょっとで日本統一しかけたほどの有名人だそうだ。

 これまでにも数限りない小説や映画やドラマや漫画、アニメの主人公になっていて、まったく興味がない人でもその生涯を語れるほどの『日本人の常識』なのだという。

「本人が話題にならなくても、誰かと比較する場合に信長とか出てくる。

 だから」

「つまりキーワードと」

「そう。

 相手は知っている前提で話すから、知らなかったらその後の話が続かなくなる」

 そうだったのか。

 よく今まで問題にならなかったものだ。

 それを言ったら肩を竦められた。

「レイナはこれまで私たち以外の人とはほとんど話さなかったでしょ?

 私たちはそんな話をしないから」

「それで無事だったと」

「そう。

 でもこれからは不特定多数の人と話したり、初対面で雑談になった時に何も知らないと」

「ヤバい」

 確かにそうだ。

 高認に受かったことで夜間中学に通う理由がなくなってしまったし、そもそもいつまでもシンのスネかじりのニートでいるわけにはいかない。

 いずれは何らかの形で社会と関わる必要がある。

 いや、その前にレスリーの組織が強引に関わってきそうだ。

 まあ、あっちは日本の常識なんか関係なさそうだけど。

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