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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第七章 聖女、受験する
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102.シチュー作ったけど食べる?

 それからも平穏な日々が続いた。

 タイロン氏からは何の連絡もない。

 相変わらずナオやサリたちとは定期的に会って遊んだりしている。

 だんだんと秋も深まってきた頃、レイナは高認の試験を受けた。

 リンも受けているはずだが会場が別なのか姿が見えない。

 高認試験は11月下旬に土日の2日間に渡って行われる。

 試験会場は初めて行く大学だった。

 そういえば大学という施設に行くのも初めてだし、そもそもこういった国家試験を受けるのも初体験だ。

 普通なら雰囲気に飲まれそうなものだがレイナは淡々としていた。

 大聖殿で聖女をやる事に比べたら何でもない。

 それでもレイナは目立ってしまっていて、前後や近くに坐った人たちからガン見されていた。

 外国人が珍しいのかと思ったが、試験会場を見渡してみたら黒髪以外もちらほらいる。

 金髪も多い。

 だがよく観ると明らかに染めていて、受験生のほとんどは日本人というか血統的に東洋人のようだった。

 サリやナオも受けたんだから、似たような人もいるのだろう。

「あの」

 突然、隣の席の人が話しかけてきた。

 そばかすが散っているが愛嬌がある女性、いや女の子だ。

「何でしょうか」

「いえ、その。

 外国の方ですよね?」

 またこれか。

 レイナの雰囲気からして普段から話しかけられたりすることはあまりないのだが、そういう場合はほぼ確実に英語で来る。

 あるいは「日本語出来ますか?」のような。

「日本人です。

 日本国籍を持っています」

「あ、そうですか……」

 尻すぼみになる女の子。

 何が言いたいのか判らないので観ているとうつむいてしまった。

 いかん。無意識に威圧していたのかも。

 それでなくてもレイナは聖女教育で身についた礼儀(マナー)が完璧すぎて、初見では庶民とみなされないことが多い。

 リン辺りに言わせると坐っているだけで周囲が貴族的になるのだとか。

 そんなの知らん。

 それきり声を掛けてこなかったので忘れることにする。

 試験が始まり、レイナは問題用紙に没頭した。

 マークシート方式なので、判らなくてもとりあえず回答欄を埋めるように丹下先生から言われている。

 数学と英語は何とかなった気がする。

 いくつか習ってない分野の問題があったが、持てる知識を応用して何とか答えらしきものを捻り出した。

 公民もサリたちから言われて直前に単語を頭に叩き込んでおいたので半分くらいは答えられた。

 一方、現代国語に古文、漢文は五里霧中だった。

 登場人物がどう考えていたかとか、判るはずがないでしょう!

 漢字の読み書きはラノベの知識で何とかなった気がする。

 象形文字は覚えやすい。

 歴史と地理はほぼ全滅。

 サイコロをもってくれば良かった。

 そして理科の科目は基礎3科目で押し通した。

 答えが判らなくてもとりあえずマークシートを埋める。

 そうやって2日間を乗り切ったレイナは精神的にクタクタになっていた。

 帰宅してシャワー浴びてすぐにベッドに入り、空腹で目が覚めるとシンからメッセージが来ていた。

『ごはん食べた?』

 慌てて応える。

『まだ』

 すぐ返事が来た。

『シチュー作ったけど食べる?』

『行く』

 というわけでラフな格好に着替えてシンの部屋へ。

 シンは準備して待っていてくれた。

「美味しい」

「高級なルー使ってるからね。

 高い肉も奮発した」

「レストランより美味しい」

「ご苦労様ということで」

 シンは何気に料理が上手い。

 前に聞いてみたけど別にレストランで修行したとかいうわけではなくて、一人暮らしで食費を節約するために自炊していたらコツが掴めるようになったらしい。

「要するにレシピ通りに作ればいいだけ。

 奇をてらったり工夫したりは駄目だね」

「そうなの」

「創作料理とかあるでしょ?

 ああいうのは料理スキルを極め尽くしたプロがやるから何とかなるわけで、素人がやったら壊滅するだけだから」

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