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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第六章 聖女、生活をエンジョイする
105/350

96.絵も人が描いているのよね

「当然。

 それ以外にどうやって作るの?」

「そうか」

 自分で言って衝撃を受けるレイナ。

 絵を描く。

 それは大変な作業だ。

 レイナもちょっとやってみたことがあるが、小さな絵を描くだけでも何時間もかかって、しかも出来上がったのは見るに堪えないものだった。

「え?

 じゃあ、この雑誌に載っている漫画の作者って毎週、これだけの絵を描いているの?」

「そう。

 某アニメで言っていたけど人間業じゃないよね」

 シンが呆れたように言った。

「しかもただ絵を描くんじゃなくて、ちゃんとストーリーがあって盛り上がったり伏線を張ったりしなきゃならない。

 一週間に16ページとか、それを延々と続ける」

「無理」

「だから漫画家って凄いんだよ」

 あっさり言うシン。

 それにしても詳しいわよね?

「いや、こんなの日本人なら誰でも知ってるから」

「そうなの」

「ま、普通の人は意識しないけどね。

 漫画って読み捨てだから」

 それはそうだ。

 レイナもコミックを読むときは1ページ1ページを細かく読んだりはしない。

 数秒で次のページに移る。

 一冊読むのに30分もかからない。

「それじゃあ、こういうのってもの凄い重労働なんじゃないの?」

「そうだよ。

 創作というものはそういうことだ」

 衝撃。

 聖力を使えば一瞬で出来ることに、普通の人は何時間も費やすことは知っていたけれど。

「絵」

「ん?」

「絵も人が描いているのよね」

「それはそうだよ。

 それ以外にどうやって、というか最近は生成AIとか出てきているからな」

 歯切れが悪いシンだった。

「知らなかった」

「絵って、僕もよく知らないけど練習すればするほど上手くなるらしいよ。

 だから漫画家になるような人は毎日毎日絵を描いて、それを何年も何十年も続けているって」

 中には最初から上手いとか、あっという間に上達する人もいるらしいけど、とシンが言ったがレイナは聞いていなかった。

 凄い。

 こっちの世界(日本)は発展していると思ってはいたけど、ミルガンテに比べたら何もかも桁外れだ。

 レイナが何気なく読んだり観たりしているものはみんな聖力なんか使わずに人間が作っていると。

「ミルガンテにも芸術はあったでしょ。

 ほら、大聖殿の彫刻とか」

「うん」

「ああいうのは国で一番の名人が作るんだけど、僕に言わせたら日本(こっち)にはあのレベルの人がゴロゴロいると思う。

 人混みで石を投げたら当たるくらい」

「凄い」

「まあ、人口が多いからね。

 しかも科学が発達しているからその人口を維持するのが容易というか、少ない労力で食料や生活必需品を生産できる。

 余った労働力がサービスというか娯楽(エンタメ)の方に流れるというわけ」

 そうなのか。

 確かにミルガンテなどは人口の9割以上が農民だった。

 食料生産にそれくらいの労力が必要で、残りの1割のうちの9割は運んだり売り買いしたりする仕事をしていた。

 シンの言う娯楽(エンタメ)の仕事に従事する人はほとんどいなかったはず。

「知らなかった」

「無理ないって。

 レイナは日本(こっち)に来てまだ1年もたってないでしょ。

 レイナの歳なら十数年かけて学ぶことをいきなり押しつけられているんだから」

 それはそうかもしれないけど、だからといって「はいそうですか」で済む問題ではない。

 日本(こっち)の人たちが最低でも9年も学校に通って学ぶ理由。

 少し考えてみれば明らかだった。

 ミルガンテとは比べものにならないほど、こっちの世界は複雑なのだ。

 これは大変だ。

 もっと真面目に勉強しようと決心するレイナだった。

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