幕間2
徳島健二はほろ酔い加減でアパートに帰ってきた。
いつものように定時で仕事を切り上げるとそのまま居酒屋に直行し、いつもの呑み仲間と一緒にくだらない話に明け暮れる。
仕事はアルバイトに毛が生えたような単純作業で給料も安いが、何と言っても残業がないのが魅力だ。
高校を何とか卒業して中堅のメーカーに就職したけど上司が厳しいので1年で辞めて家でぶらぶらしていたら親に追い出された。
仕方なく仕事を探したら割と簡単に採用になった。
以来もう十年ほど同じ事をくり返している。
今のところ文句もない。
毎日酒が飲めて楽しく暮らせれば十分だ。
今日はちょっと飲みすぎてしまったかな、と思いながらアパートに近づくと身体に感じるような音というか振動が響いているのに気がついた。
階段を上るとだんだんと音が大きくなっていく。
誰かが部屋で騒いでいるのか。
いや、そんなもんじゃない。
ドンドンバリバリと腹に響くような音が不規則に鳴り続け、おまけにライブハウスみたいな鋭い光が明滅している。
廊下にその光が漏れて不気味だ。
健二の二つ隣の部屋が震源のようだ。
何やってんだ。
部屋の中でエレキバンドがヘビメタでも演奏でもしているのか。
ミラーボールどころか閃光の演出効果付きで。
ぼんやりした頭でもカカワリアイになってはいけないことは判る。
あの部屋には確かアラサーのサラリーマンが住んでいたはずだが、何をトチ狂ってこんな夜中に。
健二は部屋に入って万年床に倒れ込むとそのまま布団を被った。
ガード下の飲み屋にいると思えばこの程度の騒音は何でもない。
そのまま寝入った。
目が覚めたら真夜中で、喉が渇いていたので買い置きのビールをきゅっとやってからふと思い出して様子を覗う。
アパートは静まりかえっていた。
あのサラリーマン、何してたんだろう?
まあいいや。




