89.アクティブなスケベ
それから何日か過ぎて、とうとうラムネはシノに遭遇してしまった。
「チクショウ、教育に悪いから絶対会わせたくなかったのに」
「うーん、キミ失礼だね?」
喫煙、酒、ギャンブル。更生しつつはあるが、依然としてダメな大人の模範例なのである。
「こんにちは。オレ。ラムネ」
「ラムネ君ね、よろしく。ボクは魔王シノ=ラグナロード。今は色々あって、喫茶店のウェイトレスしてるよ。良かったらおいで」
文言だけ聞くとツッコミどころが多いな。魔王がウェイトレス……いや、この街だとあまり珍しくないな。ドッグランにケルベロスがいたりするからな。
すると、ラムネはそわそわとシノの体を見て。
「シノ。体。触っていい?」
どストレートなセクハラ発言であった。いきなり無言で抱きついてくる癖があったので、事前に言うように教えたが。まさかセクハラに許可を求める形になろうとは。
「わ、悪いシノ!この子まだ世間知らずで……」
「え?あ、いいよいいよ。別に気にしないし。ほらラムネ君、おいで?」
許可がもらえて、ぺたぺたとシノの胸やら腹やらを触り始めるラムネ。いやお互いもうちょい気にしろや。何で俺が一人だけ気にし過ぎな人みたいになってんだよ。
「肉厚。好み」
「ははっ、正直だね。面白いよキミ」
ぎゅう、と抱きしめながら。手はせわしなく背の筋骨を楽しんで。まるで、子供が着ぐるみに抱きついて遊んでいるかのような雰囲気であった。
「でも、せっかくならさ。もう少し悪い触り方をしてもいいんだよ?こんなふうに、ね」
シノが右腕でラムネの背をがっちりと押さえ込み、動けなくさせ。左手を脇腹のあたりに回し、シャツの下からいやらしく這うように指を滑り込ませて……。
「待て待て待て待て!ストップ!それ以上はダメ!アウトだから!」
二人の間に割って入り、引き剥がす。危ない、危うくセンシティブなことになるところだった。
「やだなあ、ただの冗談だよ?」
白々しく笑いながら手を振るシノ。やはり悪人だこの野郎。
「うちの子に変なこと吹き込むな!ただでさえアクティブなスケベで困ってんだから!」
「アクティブなスケベって面白い言い方だね」
「ボケたおすな!ああもうツッコミもう一人欲しいわチクショウ!」
こういうときにアラザンがいてもツッコミにはならない気がする。やや論点がずれてるんだよな。というか最近アラザン全然近くにいないな。ラムネがずっと俺にくっついてるからか。そんなにラムネのこと嫌いなのかアイツ……不仲の間に挟まれるとキツいから仲良くしてほしいのだが。




