8.豚バラと小間切れの区別
今日は俺が魔法少女との戦闘担当である。
と言っても、負けは確定しているのだが……こちらも事情があるためでる。
「召喚!カロリアー!」
小瓶のコルクを抜き、中の黒の液体を信号機へと振りかける。ダークポーションと名付けられたそれは、無機物をゴーレム化する魔法薬である。
「かるるあーーー!!」
姿が歪み、怪物と化した信号機。これが、今日の俺の手駒である。
「もう!何回言えば分かるの!?」
そこに、いくらかキレ気味の乙女たちが駆けつけてくる。
「テスト期間中に来んなマジで!」
「ワークまだ終わってないよお……」
「有給取れ有給ー!」
なんかすごい怒ってる。いやこっちも仕事なんだけど。
しかしこうして見ると、人間ってほんと見分けがつかない。同じ種族で同じ地方、同性で同年代となるとまあ……服のカラーリングでギリギリ区別はできるが。
「うるせー!俺だってスーパーのタイムセール我慢して来てるんだかんな!」
そして信号機と魔法少女が戦っている最中。懐で呼び出し音が鳴った。
こちらの世界でいう、スマホという機械。本部の連中が色々した結果、帝国でも人間界でも使えるようになったすごい代物。この技術売ったほうが金になるんじゃ……と言っていたのはボスだったか。
『すみませんガナッシュ。言われた通り買い出しに来たのですが……豚バラと細切れの見分けがつきません』
今日の俺の最大の懸念はコイツである。このあいだ豚肉買ってこいって言ったら牛肉買ってきたからな。最近は二人でスーパーに行き、指導は何回かしてきたが……やはり不安であった。