71.異界人の受け入れ
初夏。木々の青さは鮮やかに。照りつける日差しを感じる今日このごろ。
偶然、マンションのオーナーに会ったので、シノを住民として受け入れた件について話を聞いてみたところ。
「あー、前はね、異界人を入居させたくなかったんだがね」
曰く、事故物件で心霊案件だったらしい。その原因は異界人だ、異界人なんかの受け入れをしたからおかしな現象、体調不良が相次いだのだと右派の人々が主張したらしい。それで、新規入居者が減り、異界人の受け入れもあまり積極的にはしたくなかったとのこと。
「でも、なんか急にそういうのがなくなったんだ。たぶん誰か祓い屋がやってくれたんだろうが……」
一般人は、術師の良し悪しも分からず。金をふっかけるだけで魔法もろくに使えない祓い屋の方が多いから、オーナーとして退治依頼もできずにいたのだという。
「管理課もなかなか動いてくれなかったから……。いつの間にか霊脈操作までしてくれてたみたいだし、たぶん異界人の誰かがやってくれたんだろうなって。人間界の人材じゃ絶対無理だし」
だから、異界人の受け入れに方針を切り替えたと。
「こちらとしては、問題解決してくれるんなら人間でもそうでなくてもいいからねえ」
……この街の住民の柔軟性の高さというか、徹底した合理主義にちょっと恐怖を感じた。
「で、欲しければ新しい部屋も貸してくれるってよ」
翌日の会議。またもクロミツは欠席。本国での仕事が忙しいらしい。何をやってるんだか。
「なるほど。上にも報告しておこう」
新しい派遣員が同じマンションに住むのだろうか、と思いつつ。もう一つ考えたのは。
「俺も一人暮らししようかなあ……」
ぼそ、と何気なくこぼした一言だったが。




