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69.綺麗すぎる型

 舞いが終わると、カゲノは静かに拍手をしていた。

「総反撃令のときも、踊ってるみたいだなって思ったけど。やっぱり綺麗だね」

「そりゃどーも」

 いつの間に見てたんだ、見てたんなら手伝えよと思いつつ薙刀を片付けていると。


「ねえ君さ、昔、試合か何かで相手に大怪我させたことあるでしょ」

 息が止まった。指が硬直するのが分かった。

「ああ、やっぱり。綺麗すぎると思ったんだ。だって……その舞い、殺しの型しか入ってないんだもん」

 思わず振り返った。きっと、ひどく怯えた表情をしていたと思う。

「気分を害したのならごめんね。でも……その型を教えたひと、すごく優しいひとだと思うよ。殺してでも生き延びてほしいって気持ちが伝わってくる」

 思い出すのは、幼い日の記憶。

 俺は平和な時代に生まれてきた。しかし、その一つ二つ上の世代は違う。その影が俺たちの頭上に落ちていることは、嫌と言うほど知っている。

「……もともと、始祖様に挑んだ戦士の技だ。あまりに綺麗だったから、舞いとして子孫に引き継がせたんだとよ」

 それが正しいことだったかは分からない。でも、この舞いが無ければ、俺はここにいなかったかもしれないと思う。


「自分を殺そうとした相手に惚れ込むとか、俺には全く理解できないけどな」

 原竜ともなると、恐ろしいまでに長寿である。そのために忘れ形見を残してほしいという気持ちはなんとなく察するが。強者特有の狂気にも感じる。

 そこで、カゲノがじっとこちらを見ていることに気がついた。

「いや、ね。こんなこと、君に話すべきではないと分かってはいるんだけどね」

 独り言のように語られたのは、彼らが受けた呪いについて。曰く、魔王を殺した者が魔王になる呪い。与えられるのは不老不死。唯一の解放条件は、誰かに殺されること。

 しかし、彼らは永く生きすぎた。誰の手も届かない場所にまで堕ちてしまった。だから、世界を巻き添えに死のうとした。

 そして失敗し、今ここにいる。酒と煙草で遠回りしてでも死のうとしている。どこかで何かが間違うことを祈って。

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