68.黄昏の舞い
そしてまたある日の夕方、屋上に行った。基本開放された場所であり、損害を与えないのであれば魔法や武器の使用も許可されている場所である。
誰もいないだろうと思って行ってみたところ、先客がいた。
「やあ、ガナッシュ君、だよね?」
シノの姿をしていた。しかし明らかに様子が違った。ワインレッドの双眸に、ひどく落ち着きのある表情であった。
双子かと思ったが、違う。傷の位置が完全に合致している。
「……二重人格ってやつか?」
するとシノは微笑んで、しかしどこか寂しそうな目で言う。
「そんなところかな。僕はカゲノ。この子の【機構権限】の疑似人格的演算処理機能……って言っても分かんないか。まあ簡単に言うと、寄生虫みたいなものだよ」
えらい卑下の仕方だな。というかあっちが主人格なのか。
「ああ、ごめんね。屋上使いたいんだよね?帰ったほうがいいかな?」
「いや、別にかまわねーよ。見られて困るもんじゃねーし」
そう言って、黄昏色の空に手を伸ばす。茜色の魔法陣が展開され、現れたのは一本の薙刀である。
ずっしりとした重さ。年季は入っているが、綺麗に磨かれた銀の穂と朱の柄。一族に代々受け継がれてきた家宝であり、祭具である。
「型の練習?」
「型っつーか、舞いの練習だな。定期的にやらねえと忘れるから」
スマホで録音した曲を流し、舞う。足は軽やかに、しかし重心は揺れることなく。刃が風を斬る音を愉しみ、静止させれば無音に沈み。本番はこれに鈴を付けるため、より緩急を重視して動かなければならない。
去年はカカオがやってくれたが。今年は研修とかで忙しいって言ってたし。ココアや姉貴たちがやってくれるかも不明なため俺もちゃんと練習しなければならないのである。




