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66.ありがちなネタ

 「あれ、この量でマナ酔いですか?少なめにしたのですが……」

 おぼつかない視界と朦朧とする意識の中。もう今日は寝よう、これ以上アイツの近くにいればほんとに頭がどうにかなってしまう、と自分のベッドを目指してふらふらと転がっていく。

 そしてようやく布団の中に潜り込んで⋯⋯。その匂いが自分のベッドでないことに気づく。これアラザンのじゃん。俺のアホ……。

 すると、そろりと布団をめくりあげられて。アラザンが覗き込んできた。

「そこ、私のベッドなのですが……。まあ、いいですよ。少しなら貸してあげます」

 アラザンがベッドの上に乗り、軋む音と衣擦れの音がして。

「おやすみなさい」

 軽い口づけを落とされた。頬か額かも分からない場所に。


 その瞬間、辺りが真っ白な光に包まれ。俺の姿はもとの竜人へと戻っていた。どうやら、口づけが式の解除条件だったらしい。ありがちなネタだな……いやしかし戻って良かった手足と瞼がある体って最高だなと思っていると。硬直したアラザンと目が合った。

 ちょうど、俺の腹の上に馬乗りになる体勢になってしまったアラザンと。

「あー、えっと……神域式でスライムに変身させられてて……」

 俺が説明をするより早く、アラザンの頬の赤さが耳にまで到達した。一秒後には甲高い絶叫があった。

「んななななななな!?ちょっと待ってくださいつまりそれって最初からじゃないですかうあああああ!」

「違うんだこれは不可抗力なんだ、悪気があったわけじゃなくて、えーっとお前もそんなに悪くないから……!」

 俺から跳び逃げるようにして距離を取り、杖を構えるアラザン。

「ここで貴方を始末して私も自害します……!」

「やめろ落ち着け早まるなおい待て待て待て待て!」

 その後アラザンを落ち着かせるのに三〇分かかった。俺じゃなかったら死んでたかもしれない。


 ……その後しばらく、アラザンの指を見るたびに謎の衝動を感じてしまったのは余談である。

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