65.グチャグチャにされて分かんなくなる
「ガナッシュの奴、遅いですね……もうご飯にしてやりますよ」
そう言って、冷蔵庫の中身を漁り始めるアラザン。おい配置変えるな。葉野菜を根菜で潰すような置き方やめろ。ハムとかウインナーは賞味期限順に並べてるんだからシャッフルするな使う順番分かんなくなっちゃうだろうが。
「……なんかもうフライパン出すのめんどくさいですね」
冷蔵庫の中を荒らすだけ荒らしてそんなことを言っている。焼くだけで食べれる味つき肉とか買っておいてもそういうこと言うからコイツほんとたちが悪い。
「背徳の味ですね」
夕食にカップ麺という、帝国民にあるまじき暴挙。
「洗い物少ないのって素晴らしいと思いませんか」
自分で洗う意識が芽生えたのはいいことだが、結論がこうなってしまっては問題が全く解決しない。
「さっき野菜室で見つけた、固くて苦くて不味そうなレタスの外葉です」
ご丁寧に皿に載せてくれているが。正直食いたくない。今の俺はペット枠なのだとしてもまだ尊厳を持っていたいというか。あとすごく不味そう。
「……やはり、マナが食べたいのでしょうか」
いや、そこらへんのラムネとかで十分だと思うのだが……と伝えることもできず。また膝の上に載せられた。
「ちょっとだけですよ」
アラザンの指が頭にめり込んだ。 もともと柔らかい体であり、痛みもなく若干の違和感を感じるだけだったが。問題はその後だった。
「ーーーー!」
アラザンの指先に光が灯ったかと思えば、そのままマナが流し込まれてきた。違和感が熱を帯びた感触へと変換され、思考を全てふっ飛ばすような強烈な甘味が情報として全身に広がっていく。
これが、アラザンのマナの味。おいしい。菓子や酒なんかで例えることができないくらいに甘い。濃く、重いその味に頭も体も麻痺していく。味わうなんてもんじゃない、脳に直接叩きつけられるような感覚。
「あれ、中が意外とあったかいですね……?」
不意に動かされる指。お願いやめて、脳みそおかしくなっちゃう。掻き回さないでお願いだから。
餌付けの屈辱もグチャグチャにされて分んなくなって。喰っちまえ飲み干してしまえと、体が衝動に震えてしまう。我慢しろ耐えろ俺、耐えろ耐えろ耐えろ……!耐えられなかった先にあるのはフローズンアイスだぞ……!




