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6.教えてやりたい
引っ越しのドタバタが落ち着いてから、悪の組織としての通常業務が再開となった。
相変わらず、こちらの世界でもアラザンはモテる。よく喋る奴ではない分、ミステリアスなアイドル的に人気がある。イケメンの基準は世界共通なのだろうか。
……ソイツこのあいだ玉ねぎに敗北して泣いてたぞ、と報道陣に教えてやりたい。
日が暮れてからしばらくして、玄関の扉が開く。今日は戦闘担当であったアラザンが、幾分疲れた様子で帰ってきた。
「おう、おかえり」
今日は機嫌が良かったのか、家でのクセが出たのか。自分でもよく分からないが、何気なくそう言っていた。
「……?」
アラザンはというと、何度か瞬きをして首をかしげていた。
「えっと……ただいま、で合ってますか?」
変な奴だな、と思ったが。使用人を何人も雇う家の子だ、言い慣れてなくてもおかしくはない。
「逆にそれ以外どうやって返すんだよ」
細かいことを考えるのは得意じゃない。だから、軽口程度に返しておくことにする。