アラザン小話7.討伐
なるほど。状況は詰みに近いと。
「では、私があれを破壊しても構いませんか?」
杖を召喚し、怪獣に目をやる。
「はぁっ!?きみ一人で!?無茶言うなよ、五万トン超級だぞ!?魔法使いが一人でやったって……!」
「大丈夫です。あ、これ持っててください。冷えるといけないので」
クロワッサンなどが入った買い物袋をまとめてエンジに手渡す。
「大丈夫って、ちょっ……!」
懐から小瓶を取り出し、コルクを抜いて一気に飲む。クロミツから預けられた、万が一の事態のためのオーバーマナチャージ。これさえ飲めば、威力も十分なはず。
飛行魔法を使い、怪獣の眼前へ飛ぶ。
「<凍柱>」
怪獣の足元から、円柱状に青い光が放たれる。結界魔法であり、触れるだけで凍傷になり、皮膚が剥落していく。
雄叫び、怒号。音の圧に、ひるみなどしない。
「空間情報解析完了。最適式算出完了」
マナの充填率臨界値到達。反射連鎖式構築完了。マナ回路フルドライブに移行。
あとは、全力を放つのみ。
「<零落>」
密閉された円柱内部に、閃光が瞬く。交錯し、その身を貫いて反射を繰り返す。咆哮は途絶え、静寂が空気を満たす。
残されたのは、凍てついた肉の塊。
「ていっ」
杖で軽く頭を叩けば、全身に亀裂が入り、がらがらと崩れ落ちていく。心臓のようなコアのような部分も、まとめて銀の砂塵と化した。
その後、私を勝者として式は書き換えられ。いつも通りの虹色の光と共に、状態復元式は滞りなく作動した。
何事もなかったかのように通り過ぎていく人の往来を、エンジはただ呆然と見ていた。
「か、勝っちゃった……?え、うそ、帝国の使者って、こんなんだったっけ……?」
手荷物を受け取り、クロワッサンが無事であることを確認する。
「仮にも星を一つ征服した帝国です。その軍事力が、並大抵であることが許されると思いますか?」
くすくすと笑っていると、エンジはいっそう首をかしげていた。
「なら、どうしていつも負けているんだい?これだけの力があれば、あんなガキども一瞬で……」
もっともな質問である。しかし、我々にも事情がある。
「我が帝国は、戦争を是としていません。まして、あの国と再び争うなど、あってはならないのです」
これ以上は言わないでおく。守秘義務というものである。
「そうか……今回の一見について、タイラ二アズの一員として、感謝する。きみらに敵対することがないよう、上にも伝えておこう」
「こちらこそ宜しくお願いします。良き隣人でありましょう」
そう言ってエンジは踵を返し、基地へと帰還していった。




