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アラザン小話5.面倒

 今日は調理器具を買いに、少し電車に乗って出かけてみた。一人で電車なんて初めてだったが、何とかなって良かった。

 収穫としては上々。これで、店でのレパートリーを増やすことができる。

 ……ガナッシュの奴、あれだけ言っているのに。私が本気になりつつあるとまだ気づいていないのか。全く腹立たしい。

 防犯用魔法だって言えば、身体直接付与型の魔法まで許したし。それがどれだけ危険なのか分かってないのかあの馬鹿。体に発信機埋め込むようなものだぞ。

 ……私のことは庇護対象として捉えているふしがあるが。こちらもこちらで心配なのである。

 

 帰り道の途中で見つけたベーカリー。卵液の光沢が美しく、ふわりと風にのってきたバターの香りは魅力的で。ちょうど、クロワッサンが焼き立てであるらしかった。

「ガナッシュの分も買っておけば、怒られないですよね」

 

 クロワッサンを買い、さあ帰るかとしたところで。一つ問題が発生した。駅の付近で、怪獣が大暴れしていたのである。

 薙ぎ払われていく建物、瓦礫の山を踏みしだく凶爪。一歩進むごとに地面が揺れ、人々が我先にと逃げていく。

「なんで今日来るの!?初めての彼氏とのデートなのにー!」

「あー、あのマンション建ったばっかりだったのに。もう事故物件か」

「ヤバいヤバいヤバい!これじゃ電車が遅延する!打ち合わせに遅刻したら課長にどやされる…!」

 しかしまあ、命の危機は感じていないのがこの街の住民である。状態復元という概念があるためか、怪我も死も軽いのだ。

 それはそうとして、電車の遅延は私にとっても不都合だ。瞬間移動魔法は時空の歪みに作用する可能性があるから控えるように管理課から注意を受けている。しかし飛んで帰るのも疲れる。

 どうしたものか、と飛来してくるコンクリート片をかわしつつ考える。あれは別組織の所有物。私たちの管轄区域外である。下手に手は出せない。


 一〇分も待ってれば終わるだろう、と待ってみたが。一五分立っても終わる気配がない。というか、だんだん攻撃がエスカレートしてきている。

 そこで、ビルの物陰に青年が一人うずくまっているのが見えた。青い肌に禍々しい角。確か、この区域の悪の組織、タイラ二アズの一員。

「だから反対したんだ、あんな試作品導入しちゃダメだって……!」

 頭を抱えて震えながらブツブツ何か言っている。これ絶対めんどくさいやつですね……。

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