59.地雷原上の平和
そんなこんなで開店。意外にも、開店直後からお客さんがいた。
「カナちゃんがお店やるって言ってたから、みんなで買いに来たのよお」
トップバッターは商店街のおばさま方であった。評判もあり、クッキーは飛ぶように売れ、ケーキも順調に減っていった。
途中、異界人が店なんか開きやがってと、悪質なクレーマーのような動画配信者のような輩たちも来たが。もれなく女子高生たちにボコボコにされていた。この街の住民やっぱり強い。
「えーまた右派の連中?」
「もう戦争なんてバカバカしいってのにさ」
「マジ死んでほしい」
「いや無理なんだけどねー殺すの簡単だけど死なないんだし」
「お菓子は正義だよねー」
立ち聞きしただけの会話の中に、この街の歴史の闇を改めて感じた。
それから、週一で店を開くようになり。下っ端改造人間からこの街の町長まで訪れるようになった。
来る者拒まず。どんな変な奴らが来ても絶対にツッコんではいけない。着ぐるみが来ても猫が喋っても女体化の神が来ても動じてはならない。ツッコんだら負けなのである。そう思うと、この街ってやっぱりカオスなのだと思う。
「長門、好きなの選んでいいぞ。奢ってやるから」
「あたしゃ要らんよ、提督の護衛で来ただけさね。……ああはいはい、じゃあおはぎを貰おうかね」
灰色の髪の美少女と麗しい老齢の女性。両方とも人間ではないだろう。どこの組織なんだろう。この街に住んで半年以上になるが、まだ知らないことのほうが多いらしい。
……この街には、導火線が張り巡らされている。着火剤も転がっている。地雷だって埋まっている。でも。
「おいしかったよ、ありがとう!」
そんな一言で、けろっと嬉しくなってしまう。
この平和が続いてほしいと心から祈ったのは、俺だけの秘密の話。




