5.ダメだコイツ
それから、二週間くらい一緒に暮らしてみて分かったことがある。
この同居人、思っていた以上にダメな奴だった。
「すみません。野菜の切り方が分かりません」
自炊能力の欠落。曰く、家では使用人がやってくれていたとのこと。ガチの坊っちゃんじゃねーか……。
「洗濯物って、何でこんなしわくちゃになるんです?」
服の洗い方も干し方も知らない。というかコイツ一回の洗濯に洗剤をボトル全量注ごうとしていた。
「……お風呂に、虫がいました」
反射的にマナ漏れしてしまい、氷漬けにしてしまったと。マナ漏れは魔法と違って解除できないため、地道に熱を加えて溶かすしかなく。冷蔵庫並みのサイズの氷柱を片付けるのはめちゃくちゃ大変だった。
「なあ、お前って意外とポンコツだったりする?」
「……否定できません」
一人暮らしははたして可能なのかと問いたくなるほどに、ポンコツぶりが露呈してしまっていた。
……言っちゃ悪いが、気に食わなかった奴の醜態というのは見ていて気分が良い。まあ、尻拭いは俺なのだけれども。
「これからは俺にもちゃんと優しくすることだな!」
「……善処します」
目も合わせちゃくれない。プライドがお高いようで。
「というか、貴方手慣れすぎてません?花嫁修業でもしたのですか?」
「注文の多い姉貴と妹共に振り回されていただけだっての」
姉が二人、妹二人の五人姉弟。マジで肩身狭かった。