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52.死ぬかもしれない

 正月気分もまだ抜けきらず、息がまだ白い寒さの中。今日も、商店街に買い出しに来ていた。

「お店はもうそろそろ開くのかしら?」

「あー、また延期になっちまって……ごめんな、準備はほぼ終わってるんだけどよ、本部の方でまた揉めたみたいでよ」

「そうなのねえ、大変なのねえ」

「また産直にクッキー卸しとくから」

「あらあら、宣伝もちゃっかりしてもう〜」


 そんなおばさま方との雑談もしつつ、買い物は終わり。いつも通り帰路についたところ。冬の夕闇のどこかから、声が聞こえてきた。それこそ、泣くような、すがりつくような声が。

 振り返れば幼い女の子がいた。

「たすけ、て……」

 転んだ女の子の背後には、不気味に蠢くモンスターがいた。

 三メートルはありそうな体躯。太い木の根が絡まり合う奥に光る多眼。隙間から見え隠れする口から垂れる粘液は、アスファルトを溶かしていた。


 声を出すより早く、足が動いていた。

 モンスターがひときわ大きい枝を、女の子に向かって振り下ろそうとしたそのとき。その間に飛び込んでいた。

「おい、大丈……は?」

 あとは、女の子を抱えて逃げるだけだった。

 しかし、女の子に触れた瞬間。その姿が掻き消えたのだ。


「捕まヱた゜」

 多眼と目が合った。女の子と、同じ声がした。

 要するに、幻影。つまり、最初からこれは罠だったのだ。

「クソったれ……っ!」

 女の子を庇う形で割り込んだため、すぐにバランスを崩してしまい。枝で打たれてそのまま地面に叩きつけられる。体勢を立て直すより早く、枝が体に何本も巻き付いてきて、口の方へと引きずり込まれてしまう。

「食われて、たまるかよ……!」

 しかし、右足は既に呑まれかけており。生暖かい粘液の感触と共にビリビリとした痛みが走る。さらにちくりとした痛みがした後、だんだん体に力が入らなくなってきた。

 麻痺毒。しかもかなり強力で、即効性が高い。

「うっ、ぐ……」

 こんな状態では、魔法の起動もままならない。助けを呼ぶにしても、枝を無理やり噛まされているこの状況では声も出せない。

 あれ、これ、死ぬ……?というか、このモンスター、どこの組織の……?いや状況的に、蘇生式が適用されない可能性も……。

 そんな考えが、頭をよぎってしまったとき。

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