56/224
51.嫁にもらう
そして、二人で歩いて。不意に沈黙してしまった折に、このあいだの家での会話を思い出した。
「なあ、もしもさ。俺がこのままモテることなく彼女もできずに一生独身ってことになったら、どうしたらいいと思う?」
「知りませんよそんなこと」
すげなくバッサリとそう言ったアラザンだったが。改めて数秒考えて。
「じゃあ、貴方が婿にもらえなかったら、私が嫁にもらってやりますよ」
と、嘘か本気か分からないことを言った。
コイツのことだしやりかねないよなあ、という強さはあったが。
「家政夫としての終身雇用、現職維持でおやつ付きと考えればあながち悪くないかも……」
「なに検討してるんですか行きますよ」
そもそも恋とは、愛とはと考えるより早く、アラザンがツカツカと早歩きし始め。無意識にそれを追いかけていた。
そのとき感じなかった違和感も。言葉にならなかった納得感も。翌日にはころっと忘れてしまったのは、おかしくも当然の話。




