50.妥協かよ
そして十分後。ギリギリ息をする俺と力尽きたアラザンがいた。
「マップにない通路……隠し通路か?どうすんだこれ……」
糸も蜘蛛も急速冷凍によりバラバラになった。おそらく、俺じゃなければ近くにいた者は生命の危機においやられていたことだろう。パーティーメンバーとしてかなり扱いが難しいぞコイツ。
「ガナッシュ、寒いです」
「うん、お前のせいだよ」
カタカタと震えるアラザン。コイツほんとに氷の妖精なのだろうか。マナ量のせいで冷え性とのことらしいが。ちょっと意味が分からない。
「ガナッシュ、暖めてください。凍えそうです」
「俺のマナじゃ歯が立たねえよこの氷の量……」
すると、アラザンが急に両手を広げて。
「抱いて下さい」
大真面目な顔でそんなことを言い始めた。
「お前もうちょい言い方考えろよ」
「ギュですハグです。いいから早くして下さい。貴方の無駄に大きい大胸筋は何のためにあるんですか」
言い方が図々しくて腹立つなコイツ。いや、もともと落ちたのは俺のせいなのだが。まあほっといたら低体温症になりかねないよな。
「男の人肌でいいのかよ」
「妥協します」
むす、とした表情のまま抱きしめられた。
背中に手を回すと、本当に冷たくて。軽く霜が降りそうなくらいだった。手のかかる奴……。
しかし、こうして俺の腕の中で震えていると。必死に腕を回してすり寄ってくるのなんて。なんだか、ゾクリとした楽しさが背を這ってしまう。
「……あったかいですね」
こう薄暗い中で、二人っきりで、ふにゃりとした表情を見てしまうと。何か、いけないことをしているような気がしてしまう。
「よっし行くぞ!さっさと出るぞこんなとこ!」
危なかった。危うくほんとに目覚めるところだった。
数分後。マナチャージを飲んだアラザンがようやく歩けるようになったところで、攻略再開。
「依頼の鉱石は見つけましたし、あとは広めの部屋に出て、転移魔法で帰るだけですね」




