49.落とし穴
年明け。店の開業準備を進めていたところ、クロミツから素材採取の依頼を受けた。曰く、クロミツが担当している例の、試作機とやらに必要なものらしい。
で、シフトに余裕があった俺と、鑑定魔法が使えるアラザンとでダンジョン攻略を行うことに。
「久しぶりだな、ダンジョンなんて」
古代の遺跡。地下通路が交錯する迷宮。かつては防空壕、軍備品の倉庫として使われる軍事施設でもあった。しかし、休戦協定の後、管理が自治体に移ったり移らなかったりで長らく放置され荒廃。そこに自然マナが滞留し、モンスターが発生。以後、特殊素材の採取や戦闘訓練の一環として使われるようになったのだとか。
ちょうど今は試験とも被らないシーズンオフということもあり、俺たち以外はいないらしかった。
しかし、しかしだ。俺たちは本当に運がない。
「……ごめん」
俺がうっかり踏んだ床が落とし穴になっており、二人して落っこちてしまった。
刺殺用の針は朽ちており、即串刺しにならなかったのはいいものの。少々厄介なことになっていた。
「タイラントスパイダーの巣か……」
太い、粘着性の高い糸の上で身動きが取れなくなってしまった。俺は仰向けに、その上にアラザンが倒れ込んでしまっている。
「これ、けっこうまずいんじゃ……?」
「相当まずいですよ。早くなんとかしないと……今、糸を切りますから」
そのときふと、足音が聞こえた。あ、これ足が四本以上ある奴だ……。
「すみません。一つ、改めて言っておくことがあります。……私、虫全般が苦手でして」
青ざめた顔で横穴に目をやるアラザン。
そこには、複眼を光らせた巨大な蜘蛛がいた。
「うわあああああああーーーー!!!!」
絶叫と共に撒き散らされる氷のマナ。凄まじい冷気。
うん、知ってた。




