41.嘘でない言葉
しかしこう、上に座られながらミーティアボイスで応援されると。何か異様な興奮が沸き立ってしまう。落ち着け俺。コイツはミーティアじゃなくて美少女モドキだ。
「えらいえらい、よくできてますよ」
ダメだ顔が見えない分、天使が囁いているようにしか聞こえない。やめて背中ぽんぽんしないで嬉しくなっちゃうから。
これはある種のご褒美なのではと考えているうちに、少し気になったことがある。
「なあ、お前また太った?なんか、尻がすげえ柔らかいんだけど」
しばらくの間、沈黙があった。かと思えば、アラザンは急に立ち上がり、俺の脇腹をげしげしと蹴り始めた。
「いきなり蹴るってひどくない!?」
「蹴られたいようだったので」
「誰がんなドM注文した!?」
そんな問答をしつつ筋トレを続け。汗をかいたので風呂に入り、寝た。
翌日、休憩室でクロミツに計測器を返した。
「おーっとこれは……うん、なるほどネ……そうきたカ……。んー、まあ、大丈夫、かナ、たぶん……」
パソコンのデータをチェックしながら、考え込んでいるクロミツ。
「あ、悪い、何かダメだったか?測り直しなら、付き合うけど……」
「んや、大丈夫ネ。むしろこっちの方が良いかモ」
謎のグラフやら文字列やらで、俺にはさっぱり意味が分からないが。本人が大丈夫と言うのならたぶん大丈夫なのだろう。
「ところで、ネ。昨日の晩、運動……とか、したのかナ?」
「ああ、してたな。アラザンと」
「……アラザンと、なのネ……」
ぺしょり、と垂れる耳。心なしか赤くなった頬。
「まあ、男の子だもんネ。そういう欲もあって当然よネ……いや、普通計測器外すヨ……?うーん……」
何か誤解を受けているような気もしないでもなかったが。余計ややこしくなるのも面倒だったので黙っておくことにした。
「まあ、サンプルとしては十分ネ。ありがとネ、これで試作機が造れるヨ」
「……?試作機?何の?」
すると、クロミツは笑いながら振り返り。
「偽心兵」
とだけ言った。その言葉はどこかで見たことがあるような気がしたが、何を意味しているのかは思い出せなかった。
ただ一つ分かるのは、その言葉だけは嘘ではないこと。
なんせ、ずっと彼女の周囲を満たしていた、飄々とした軽い空気感が、一瞬のうちに消え失せてしまったのだから。
……この冗談の中に、もう一つ真実が隠れていることを知るのは、まだ少し先の話。




