40.荒くなった息遣い
その後、しばらく筋トレを続けていると、徐々に息が上がってきた。
「んっ……ふぅ……はぁ……」
すると、ソファでスマホをいじっていたアラザンが、おもむろに立ち上がり、俺の背に乗っかってきた。
「うぉわ!?何してんの!?」
「苦しむのが好きなようなので、重しをかけてあげようかと」
「だから苦しんですわけじゃないけど!?お前にとって筋トレは何だってんの!?」
「苦行です。もしくは、時間解除型の状態異常系魔法です」
いやどんだけ嫌いなんだよ。というか魔法で例えんな分かんないから。
「使う筋肉さえ最低限ついてればいいじゃないですか。なんでわざわざ普段使わない筋肉を痛めつける必要があるんですか」
「痛めつけてねーよ、楽しいからやってんだよ」
こいつ変態だ、みたいな目で見られた。ひどい。
しかし何回かやってみると、以外にもアラザンの体重込みでやれる気がしてきた。
「はぁっ……ふぅー……んんっ……」
しばらくするとアラザンも黙り。荒くなった俺の息遣いだけが部屋に響く。
こうなってくると、時々漏れる声を聞かれるのがだんだん恥ずかしくなってくる。
「なあ、何か喋ってくれ。急に恥ずかしくなってきたから」
「何かって……そうですね。ガンバレガンバレ」
すごく雑な、棒読みの応援だった。コイツ、その気になれば演技できるくせに。
「もうちょい心込めてほしい。あ、できればちょっとエッチなお姉さん風がいい」
「注文多いですよ。煩悩消す気あるんですか」
しまった、当初の目的を忘れていた。
するとアラザンは、喉に手を触れさせながら、声の調子を変え始めた。
「あー、あー……こんなのもでしょうか」
その声には、聞き覚えがあった。
「がんばれ、がんばれ♪」
柔らかく、心地よい声。ふんわりとした音の響き。あどけなさのある、悪戯っぽい声。
紛れもない、ミーティアの声であった。
「待って待ってミーティアはずるくない!?」
「貴方はこの声が一番好きだろうと思ったので」
「図星だよコンチクショウファンサありがとう御座います!」
筋トレしても全く情緒が安定しない。諸悪の根源すぎやしないかこの野郎。




