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39.計測器具

 その数日後、クロミツが家にやって来て。器具一式を渡された。

 金属製で、曰く両手首と首に着けてほしいとのこと。

「バイタルとかマナの計測器ネ。お風呂のときには外してオッケーだヨ」

 黒く、ずっしりと重い。試しに着けてみたが、見た目としては検査体というより囚人に近い。

「この器具超重いからネ。ムキムキしてる君に頼みたかったノ」

 それならそう言ってほしい。邪推するから。

「丸一日分のデータがほしいネ。あ、壊したら僕が怒られるから、大事に扱ってあげてネ。じゃ、バイバーイ」

 ひらひらとまた袖を振って、クロミツは帰っていった。


 それから、アラザンが戦闘から帰ってきて。

「何ですかそれ。新手のプレイですか」

 帰宅後面と向かっての第一声がこれである。失礼すぎやしないか。

「ただの計測器具だっての!てか何でプレイだと思った!?お前は俺のこと何だと思ってんの!?」

「美少女にゴミを見るような目で睨まれて興奮するド変態」

 チクショウ何も言い返せない。このあいだミーティアに目覚めかけて以来、そっち方面のエッチな本検索しちゃったとか絶対言えない。

「……こうなったら、筋トレするしかないな」

「貴方の思考回路どうなっているんですか」

「筋肉は全てを解決するんだよ」

 淡々と、無心に筋トレすると精神が落ち着いてくるのである。これはおそらく、幼い頃からのルーティンというやつなのだろう。


 ストレッチを軽くして、腕立て伏せ。首に重りがある分、姿勢に気をつけて行わなければならない。

「自分の部屋でやらないんですか」

「スクワットとかダンベルならともかく、腕立て伏せはスペースが要るからな……。俺の部屋、なんか日に日に狭くなるし……」

「掃除したらどうですか」

「それはそうなんだけどよ……なんかめんどくさくて……」

 コイツに正論で言い負かされたのは、意外と初めてかもしれない。

「そもそも、何で筋トレなんて必要なのですか。私たち、徒歩出勤してるじゃないですか」

「?あれって運動に入るのか?」

 三秒くらいの間の後。通勤は運動だろ派と体育会系の間にまたがる溝の深さに気がついた。

「自主的に肉体に苦痛を与えて、何が楽しいんですか」

「苦痛じゃないだろ……負荷?っつーか、息が上がるっつーか。体があったまって、汗かいたらさっぱり気持ちいいじゃんか」

 何言ってんだコイツ、みたいな顔をしている。俺、そんなに変なこと言ったかな。

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