37.闇堕ちは却下された
「なあ、これは流石にやり過ぎなんじゃ……おわっ!?」
一歩前に踏み出したら、足元の氷でそのまますっ転んだ。痛い。恥ずかしすぎる。
「こんな氷で転ぶとか、カッコ悪いですね」
幾分すっきりした表情のミーティアが、ひっくり返った俺の顔を覗き込みながら着地した。
……スカートの中。ぴっちりしたスパッツで、体のラインが丸見えになっている。見下されるのも悪くないかもしれない。
いや落ち着け俺。これ以上性癖が歪むといよいよ取り返しがつかなくなる。冷静になれ。
「その魔法術式、王国のじゃないポム……きみ、まさか帝国の……!?」
キラピュアーズのマスコットキャラクター、ポムル。ふわふわのクマのぬいぐるみのような見た目だが、これでも王国の使徒である。
「ええ、そうですよ。ようやく気がついたんですね、うっかりさん」
契約魔法を破棄し、正体を現したアラザン。
しかし、こうも早くバラすとは。何か急な予定変更があったのだろうか。まあ、俺は分からないからアラザンの判断に従っておくが。
……闇堕ちっぽい演出をしてもいいのでは、という案もあったのだが。色々とめんどくさかったので却下された。残念。
「アラザンって女の子だったの!?」
「ど、どうしよう、こんがらがってきた……」
キラピュアーズ側も、かなり混乱しているようだったが。
「もうっ!次会ったときはタダじゃおかないんだから!」
清々しいまでに敵認定してくれた。騙されたら殴り返すくらいに根性ある奴らで助かった。
「嫌な感じがしたので。念のため、早めに手を切っておこうかと」
考えすぎだとは思うが。危険要素はすぐに切り捨てるべきだとボスは判断し。アラザンにかけられた契約魔法のデータも本部に送信した。
それからしばらく経ち。自室でスマホをいじっている。
キラ・ミーティア。一日だけ現れた追加戦士であり、その正体は性別不詳の悪の組織の派遣員。
超高出力魔法でカロリアーを破壊する様子が、華々しくネットにばら撒かれていた。
しかし、やはり可愛い。たぶんメンバーの中でぶっちぎりで可愛い。俺でも見分けがついてしまうくらいなんだから。
「……可愛い」
ああ、もしも。あの新雪のコスチュームを、黒く塗りつぶしたら。俺の手の中に、堕ちてくれたら。
そんな妄想をして、ゾクゾクとしてしまうくらいには、俺にも悪の心が芽生えていた。
「ああ、チクショウ、どうしてくれんだよ……」
劣情にも似た念を抱きながら布団をかぶったのは、誰にも言えない話である。
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