36.ちょっと泣きたいくらい
「私、魔法少女をやることになりました」
顔の良さとマナ量から、熱烈にスカウトを受け。そのまま了承したらしい。見る目ないな王国の使徒……。
「アジトの場所も教えてもらいましたし、契約魔法のデータも取れました」
心なしか楽しそうに見えるアラザン。絶対エンジョイしてるなこの野郎。
「早速、次の戦闘から参加することになりました」
ピカピカの変身アイテム。マジでやる気だコイツ。
「え、次、担当俺なんだけど?ということはつまり……?」
そして数日後。とうとうシフトが回ってきた。
「キラ・ミーティア。……参ります」
胸元には大きなリボンと星型の宝石。腰から長く垂れたリボンは、流星の名の通り。真っ白な雪を思わせるスカートに、差し色は紺と金。ボリュームが増えた髪は、ハーフツインテール。
これはまた……すごく可愛くなってる。落ち着け俺。コイツは男だ。
「な、仲間を増やしたのか魔法少女め!ずるいぞこっちだって人材不足の問題があるってのに!」
ひとまずは、茶番を装う。これで信じてもらえるのかは分からないが。
「え、帝国、人材不足なん?」
「少子高齢化かー?」
「まさか、悪の帝国にも過労死や晩婚化の問題が……?」
どうしよう、いらん心配されてる。
すると、アラザン……もといミーティアは溜め息をついて。
「……では、お姫様方。ここは私が片付けるので、下がっていて下さい」
そう言うや否や、ミーティアとキラピュアーズの間に氷の壁が生成された。
「えっ、待って、一人じゃ危ないよ、六花ちゃん!」
ピンクの制止も振り切って、ステッキを構えるミーティア。
「さあ、戦りあいましょうか。ガナッシュ」
そして始まったのは、一方的な蹂躙だった。
基本、キラピュアーズ側がずっと優勢で、そのまま押し切ることが多いが。今回はさらにひどいワンサイドゲームだった。
今回のカロリアーの素体は、順路標識。カロリアーが指し示す順路に強制的に従わせるという、我ながら悪どい個体だったのだが……アラザンの魔法抵抗力は想像を絶しており。妨害術式をガン無視して突っ込んできた。
「<氷花><凍柱><氷柱>」
地面に氷の茨が走り、銀の花を咲かせる。花びらは宙を舞い、カロリアーに無慈悲に降り注ぐ。ついで円柱の結界が展開され、閉じ込められた獲物を急速冷凍。そして、そのまま槍のごとき氷柱で木っ端微塵に。
……ちょっと泣きたいくらいにボッコボコにされた。ごめんカロリアー。
しかし、半年以上生温さを求められた代償がこれか。自重しろって先に言っておくべきだった……。




